人身事故・死亡事故

※2025年6月1日より、改正刑法に基づき懲役刑および禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されました。
当ページでは法改正に基づき「拘禁刑」と表記していますが、旧制度や過去の事件に関連する場合は「懲役」「禁錮」の表現も含まれます。

車やバイクを運転していて不注意で人身事故や死亡事故を起こした場合は、以下のとおり自動車運転死傷行為処罰法(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)によって規制処罰の対象になります。

(危険運転致死傷)

第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の拘禁刑に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期拘禁刑に処する。

一 アルコール影響正常運転困難状態(身体に血液一ミリリットルにつき一・〇ミリグラム以上又は呼気一リットルにつき〇・五ミリグラム以上のアルコールを保有する状態その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態をいう。次条第一項において同じ。)で自動車を走行させる行為

二 薬物影響正常運転困難状態(薬物の影響により正常な運転が困難な状態をいう。次条第一項において同じ。)で自動車を走行させる行為

三 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為

四 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ当該イ又はロに定める速度以上の高速度その他道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度(次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ当該イ又はロに定める速度に準ずるものに限る。)で自動車を運転する行為

イ 最高速度(道路交通法第二十二条第一項の規定によりこれを超える速度で進行してはならないこととされている最高速度(原動機付自転車を運転する場合にあっては、同法第三条に規定する普通自動二輪車の最高速度)をいう。以下この号において同じ。)が六十キロメートル毎時以下である場合 最高速度を五十キロメートル毎時超える速度
ロ 最高速度が六十キロメートル毎時を超える場合 最高速度を六十キロメートル毎時超える速度

五 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為

六 殊更にタイヤを滑らせ又は浮かせることにより、その進行を制御することが困難な状態にさせて、自動車を走行させる行為

七 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

八 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為

九 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為

十 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

十一 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

1 危険運転致傷罪

(1)危険運転致死傷罪とは?

危険運転致死傷罪が適用されるのは、①一定の類型に当てはまる場合、②人が死亡・負傷した場合です。

(2)危険運転致死傷罪が成立する条件

まず、次のような類型のいずれかに当たる必要があります。なお、いずれの類型であっても、自分が以下の類型に該当するような行為を行っているという認識が必要になります。

①アルコール影響運転(2条1号)

アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為によって、人を死傷させる罪です。

「正常な運転が困難な状態」とは、アルコールの影響により、道路交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態をいうとされています。前方にある危険を的確に把握し、対処することができない状態などがこれにあたります。

これを明確にするため、令和8年7月21日より新たに数値基準が導入されました。この法改正により、呼気アルコール濃度0.5mg/L(血液アルコール濃度1.0mg/mL)以上のアルコールを保有する状態での運転も、危険運転の対象となりました。

なお、この数値に満たない場合でも、「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」にあたると判断される可能性はあります。

②薬物影響運転(2条2号)

薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為によって、人を死傷させる罪です。

ここでの薬物は、違法薬物(覚醒剤や大麻等)に限られず、睡眠薬等の医薬品も含まれます。

③制御困難運転(2条3号)

進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為によって、人を死傷させる罪です。

「進行を制御することが困難」とは、速度が速すぎるため、道路の状況に応じて進行することが困難な状態をいいます。具体的には、ハンドルやブレーキのわずかなミスで、自車を進路から逸脱させて、事故を起こしてしまいかねないような速度をいいます。

何キロオーバーということが数値で決まっているわけではなく、道路状況や車両の構造・性能等に照らして判断されます。例えば、カーブを曲がり切れないような高速度で自動車を走行させる場合が挙げられます。

なお、進路を逸脱せずに走行できている場合には、常識的に見ると極めて危険な高速度運転であっても、この危険運転にはあたらないとの判断がされる傾向にあることが指摘されており、これに対応するため、次に述べる4号の規定が作られました(令和8年7月21日施行)。

④高速度運転(2条4号)

道路及び交通の状況に応じて、重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度で自動車を走行させる行為によって、人を死傷させる罪です。

ここでの「高速度」とは、以下のとおりです。

➀法定速度が時速60km以下の道路では、時速50km以上の速度超過、➁法定速度が時速60kmを超える道路では、時速60km以上の速度超過、③以上の数値に満たない速度超過でも、数値基準に「準ずる」速度であれば、ここでの「高速度」に該当する場合があります。

③の場合は、道路の形状、路面の状況、歩行者・他の車両の交通量等を考慮して個別具体的に判断されます。例えば、雪の影響で道路が滑りやすい場合には、数値基準を少し下回っていても、ここでの「高速度」にあたると判断されやすいといえます。なお、少なくとも数値基準を時速10km以上下回る速度は、数値基準に「準ずる」速度にあたらないとされています。

⑤未熟運転(2条5号)

進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為によって、人を死傷させる罪です。

「進行を制御する技能を有しない」とは、基本的な自動車操作の技能を有しないことをいいます。技能の有無が問題とされるので、免許の有無を基準として判断せず、実際に技能がどの程度あったのかという観点から判断されます。

⑥殊更滑走運転等(ドリフト走行・ウィリー走行)(2条6号)

殊更にタイヤを滑らせ又は浮かせることにより、その進行を制御することが困難な状態にさせて、自動車を走行させる行為によって、人を死傷させる罪です。

ドリフト走行、ウィリー走行のことを指します。

令和8年7月21日から新たに処罰対象となりました。

⑦妨害運転(2条7号)

人または車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為によって、人を死傷させる罪です。

幅寄せ行為やあおり行為がこれにあたります。本罪が想定しているのは、加害者車両が「重大な交通の危険を生じさせる速度」で走行している場合です。

本罪の成立には、妨害の目的が必要ですが、妨害の目的とは、相手に急ブレーキを踏ませようとするといった自由かつ安全な通行を妨げることを積極的に意図することを言います。単に交通事情によりやむを得ず割り込んでしまった場合には、このような目的がないと判断されます。

⑧妨害運転(2条8号)

車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為によって、人を死傷させる罪です。

7号と異なり、本罪は、加害者車両が「重大な交通の危険が生じることとなる速度」で走行していなくても成立します。ただし、被害者車両は「重大な交通の危険が生じることとなる速度」で走行している必要があります。

⑨高速道路妨害運転(2条9号)

高速道路または自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止または徐行をさせる行為によって、人を死傷させる罪です。

高速道路等での停止行為は、非常に危険なため、加害者車両や被害者車両の速度がゆっくりであっても、通行妨害目的で停止すれば、危険運転の対象となります。

⑩殊更信号無視運転(2条10号)

赤色信号またはこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為によって、人を死傷させる罪です。

「殊更に無視」とは、赤信号であることを認識している場合のみでなく、およそ赤色信号標識に従う意思のない場合をいいます。例えば、赤色信号であることを見過ごした場合は「殊更に無視」にはあたらないこととなります。

⑪通行禁止道路運転(2条11号)

通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為によって、人を死傷させる罪です。

 

2 準危険運転致死傷罪(3条1項)

アルコールや薬物、あるいは一定の病気による影響により、正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物、あるいはその病気の影響により、正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた場合に成立します。

アルコールの数値基準は、ここでも適用されます。つまり、血液アルコール1.0mg/mL、又は、呼気アルコール0.5mg/L以上のアルコールを保有する状態であれば、「正常な運転が困難な状態」にあると判断されます。

ここでは、危険運転致死傷と異なり、「正常な運転に支障が生じるおそれ」で足りるとなっています。それに伴い、本人の認識としても、このおそれがあればよいということになります。

 

3 アルコール等影響発覚免脱罪(4条)

アルコール又は薬物の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で事故を起こし、人を死傷させた場合に、運転当時のアルコール又は薬物の影響の有無や程度が発覚することを免れる目的で、さらにアルコールを摂取、あるいは、その場から離れアルコール又は薬物の濃度を減少させること等をした場合に成立します。

飲酒運転で事故を起こした後、現場から逃走し、数時間おいてから出頭すると、体内からアルコールが抜け、飲酒運転の立証が困難になります。このような逃げ得を防ぐため、この罪が作られました。

 

4 過失運転致死傷(5条)

前方不注視やスピード違反などの過失により、自動車事故で人を負傷させたり、死亡させたりする場合に成立します。

 

5 無免許による加重(6条)

無免許の場合は、各罪の法定刑がそれぞれ引き上げられます(ただし、未熟運転の罪は除く)。

 

~人身事故・死亡事故における弁護活動~

①人身事故・死亡事故に至る経緯・事件の全体像の把握

人身事故・死亡事故で警察に検挙・逮捕され刑事事件となった場合、初犯の過失運転致死傷罪で、かつ被害が軽微であったり、過失の態様が軽微であったりする場合は、罰金で済むことも考えられます。

しかし、危険運転致死傷罪や発覚免脱罪は、刑事事件の中でも重い法定刑が規定されています。そのため、危険運転致死傷罪や発覚免脱罪の場合、起訴されると正式裁判になってしまいます。裁判所での審理の結果、拘禁刑の実刑判決が言い渡されることになれば、刑務所に入ることとなります。

弁護士は、人身事故・死亡事故に至った経緯や動機、当時の状況、その他の事情を精査し全体像を把握した上、適切な弁護方針をご案内いたします。逮捕直後から、人身事故・死亡事故に強い弁護士が弁護を引き受けることで、一貫した弁護活動を行うことができます。

 

②裁判員裁判への対応

危険運転致死罪の場合、故意の犯罪により人を死亡させたことになるので、裁判員裁判対象事件となります。

裁判員裁判の場合、裁判を開く前に公判前整理手続が開かれ、弁護側は検察官から捜査資料の開示を受けることができます。この時、適切な捜査資料の開示を受けることができれば、その後の弁護側の主張に利することができます。

 

③不起訴処分や刑の減軽・執行猶予の獲得

人身事故・死亡事故は、被害者がいる犯罪であるため示談解決がポイントとなります。

示談は契約ですので、被疑者と被害者が合意することにより作ることになりますが、被疑者が捜査機関に被害者の連絡先を聴いても教えてもらえないのが通常です。

また、仮に連絡先を知っていたとしても、相手方の被害感情が強い場合、直接被疑者が被害者と交渉を行うのは非常に困難であるといえます。

一方、弁護士を通じれば、検察官より被害者の連絡先を教えていただける場合が多々あります。ですので、弁護士に依頼することにより被害者とコンタクトをとりやすくなります。

また、弁護士が間に入れば、冷静な交渉により妥当な金額での示談解決が図りやすくなります。

 

④早期の身柄解放

人身事故・死亡事故で警察に逮捕・勾留された場合、容疑者・被告人が反省しており逃亡したり証拠隠滅したりするおそれがないことを客観的な証拠に基づいて説得的に主張していきます。早期に釈放されることで、会社や学校を長期間休まずに済み、その後の社会復帰がスムーズに行いやすくすることができます。

 

⑤環境調整

重大事故を起こした場合や交通事故の前科がある場合は、運転免許を返納した上で車を売却する等の検討も視野に入ってきます。また、職場の近くに転居するなど車を使わなくても生活できるよう環境を調整していく必要があります。

環境調整のための様々なアドバイスを致します。

大津など滋賀県で車両による人身事故・死亡事故でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご連絡ください。弊所では、大津など滋賀県内の様々な交通犯罪について、刑事事件・少年事件に強い弁護士による無料の法律相談を行っています。関係者が滋賀県で逮捕勾留されている場合でも、最短当日に、弁護士が直接留置場や拘置所へ出張面会してアドバイスする初回接見サービスもご用意しています。

 

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