熱中症で業務上過失致死事件

熱中症で業務上過失致死事件

Aさんは、滋賀県彦根市の建設現場で働く建設会社の社長ですが、現場では特に熱中症対策をしておらず、水分補給や休憩の時間も満足に取らせていませんでした。
ある日、Aさんの現場で働いている作業員のVさんが、めまいや頭痛、吐き気を訴えました。
Aさんは、「どうせ昨日飲みすぎたんだろう。甘えずに現場に戻れ」と大して取り合わずにあしらっていました。
するとしばらくしてからVさんは意識を失ってしまいました。
周りの人が慌てて救急車を呼びましたが、Vさんは搬送先の病院で死亡してしまいました。
そこで、Vさんは熱中症であったことや、現場で熱中症対策が行われていなかったことも判明しました。
その後、Aさんは滋賀県彦根警察署業務上過失致死罪の容疑で話を聞かれることになりました。
(※この事例はフィクションです。)

・熱中症

8月も半ばに差し掛かり、暑い日が続いています。
京都や滋賀では最高気温が35度以上となる猛暑日が続く時期もあります。
ニュース番組や新聞記事でも熱中症に注意しましょう、という内容のものが多く流れていますが、今回はその熱中症にかかわる刑事事件です。

熱中症は、高温多湿な環境で、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、調整機能がおかしくなってしまったりした場合に起こるもので、その症状としては、頭痛やめまい、吐き気、高体温といったものが見られます。
熱中症がひどくなると意識を失ってしまうこともあり、最悪の場合死亡してしまうこともあります。
毎年夏には多くの方が熱中症にかかっており、亡くなってしまう方も少なくありません。
総務省の統計によると、今年の7月29日~8月4日までの間で、熱中症で救急搬送された人数は滋賀県で185人(速報値)となっており、昨年の同時期のものと比べて70人以上多くなっています。

熱中症対策としては、定期的な水分・塩分の補給はもちろん、風通しのよい服を着たり、疲れをためないように工夫したりすることも求められます。
熱中症になってしまった場合には、そのまま放置することは危険です。
まずは体を冷やしたり水分・塩分を補給したりして、それが難しいようであったり意識がはっきりしないようであれば救急車を呼びましょう。

・熱中症と業務上過失致死罪

今回のVさんは、職場で熱中症になってしまったようです。
しかし、Aさんは特に熱中症対策を現場ですることなく、熱中症の症状を訴えたVさんをあしらい、熱中症に対する処置をせずにいました。
こうした対応が、業務上過失致死罪となる可能性があります。

刑法211条(業務上過失致死傷罪)
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

今回の場合の問題は、Aさんが「業務上必要な注意を怠」ったことによってVさんが熱中症となり死んでしまったのかどうかということです。
ここで、労働契約法という法律を見てみましょう。
この法律には、以下のような条文があります。

労働契約法5条(安全配慮義務)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

Aさんは建設会社の社長ですから「使用者」であり、その従業員で作業員をしていたVさんは「労働者」でしょう。
この義務は一般に「安全配慮義務」と呼ばれており、これに違反したからと言って犯罪になって処罰される、というわけではありません。
しかし、こうした義務がある以上、Aさんはこの安全配慮義務を守らなければなりません。
ですが、Aさんは熱中症対策をすることなく、さらにVさんの体調不良の申し出があった後もそれに配慮することなく対策を講じていません。
こうしたことから、Aさんには安全配慮義務違反があったと考えられ、同時に業務上過失致死罪にいう「業務上必要な注意を怠」ったということが考えられるのです。
ですから、Aさんに業務上過失致死罪が成立する可能性があるのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、こうした熱中症による業務上過失致死事件のご相談にも、刑事事件専門の弁護士が丁寧に対応いたします。
在宅捜査を受けている方は初回無料法律相談を、逮捕されてしまっている方は初回接見サービスを、それぞれお気軽にご利用ください(ご予約:0120-631-881)。

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