立ちションで公然わいせつ罪に?①

立ちションで公然わいせつ罪に?①

立ちション公然わいせつ罪を疑われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

滋賀県長浜市に住んでいるAさんは、近所の居酒屋で行われた会社の忘年会に参加していました。
Aさんはそこで大量に酒を飲み、酔っぱらっていました。
忘年会が解散となり、徒歩で帰路についたAさんでしたが、外気が冷えていたこともあり、急に尿意を催しました。
しかし、近くにトイレがなく、家までもまだ距離があったことから、Aさんは道端で立ちションをして用を足そうと思いつきました。
そこは大通りで、普段は夜でも人通りも多い道でしたが、たまたまその時間帯は人通りがありませんでした。
Aさんは、「今人がいないし用を足すだけだから大丈夫だろう。もし人が通って見られたとしても、暗いし時間帯も遅いからこちらのことなど構わないで通り過ぎるだろう」と思い、道端で立ちションを始めました。
ですが、通行人WさんがAさんが立ちションしている様子を目撃し、「道端で下半身を露出している男がいる」と滋賀県木之本警察署に通報。
Aさんは駆け付けた警察官に公然わいせつ事件の被疑者として任意同行を求められてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・立ちションで公然わいせつ罪になるのか?

公共の場所で下半身を露出した、というケースでは、公然わいせつ罪を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
今回のAさんも公然わいせつ罪の容疑をかけられてしまっています。
まずは公然わいせつ罪がどういった犯罪なのか見てみましょう。

刑法174条(公然わいせつ罪)
公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

公然わいせつ罪は、罪名からも分かるように、「公然とわいせつな行為をした」場合に成立する犯罪です。
では、その「公然とわいせつな行為をした」とはどういった場合を指すのでしょうか。

まず、公然わいせつ罪の「公然と」について考えてみましょう。
「公然と」という言葉からは、公共の場所であったり開けた場所であったり、人の多い場所での犯行がイメージされがちです。
「公然と」とは、「不特定または多数人が認識することのできる状態」をいうとされているため(最決昭和32.5.22)、たしかにそのイメージから大きく外れてはいません。
しかし、ここで注意すべきなのは、公然わいせつ罪の「公然と」は、あくまで「不特定または多数人が認識『できる』状態」のことを指しているのであり、実際に公然わいせつ罪を実行する際に不特定多数の人がその公然わいせつ行為を認識している必要はないということです。
つまり、理論上、目撃者が1人もいなかったとしても、「不特定または多数人が認識できる状態」でわいせつな行為をしていれば、公然わいせつ罪は成立しうるということになるのです(ただし、こうした場合刑事事件化する可能性が低いと考えられます。)。
これは、公然わいせつ罪が守っているものが、社会の健全な性秩序や性風俗であると考えられていることからきています。

そして、「わいせつな行為」とは、「その行為者またはその他の物の性欲を刺激興奮または満足させる動作であって、普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反するもの」とされています(東京高判昭和27.12.18)。
代表的なものでいえば、いわゆる露出狂のように他人に性器等を見せつける行為や、性交・性交類似行為が挙げられます。

これらの行為と客観的状況を把握して行っていた場合には、公然わいせつ罪が成立するとされています。

今回のAさんの事例を考えてみましょう。
まず、Aさんは大通りで立ちションをしています。
大通りは普段夜でも人通りのある道であり、たまたまAさんが立ちションをしようとした時間帯に人がいなかっただけであることから、いつでも人が通る可能性のある場所であったと考えられます。
Aさんはその道端で立ちションをしていて、さらに「見られても特に気にされないだろう」と考えていたことから、特段他の人から隠れて見えないように立ちションをしていたわけでもなさそうです。
前述した通り、公然わいせつ罪の成立条件の「公然と」を満たすには、実際に不特定多数の人が公然わいせつ行為を目撃・認識する必要はなく、その可能性があれば十分です。
ですから、今回目撃者はWさん1人のようであり、さらに人通りの少ないタイミングであったとしても、Aさんは公然わいせつ罪における「公然と」の用件を満たしているといえるでしょう。

では、「わいせつな行為」についてはどうでしょうか。

次回の記事で解説します。

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