自動車による監禁事件
自動車による監禁事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
滋賀県甲賀市に住むAさんは自身の車で知人Vさんを送っている途中、Vさんが降ろしてほしいと言ったにも関わらず車を走行させ続けました。
AさんはVさんの再三の要請も無視して、Vさんが最初に降りたいといった時点から1時間経過したのち、Vさんに滋賀県甲賀警察署に通報すると言われ、ようやくVさんを車から降ろしました。
その後、VさんはAさんの行為に恐怖を感じ、滋賀県甲賀警察署に被害届を出すと言ってるようです。
Aさんはどうしてよいか不安になり、弁護士に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
~自動車から降ろさなかったら何罪?~
今回のAさんの行為は、刑法の監禁罪にあたる可能性のある行為です。
刑法第220条(逮捕及び監禁)
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は3月以上7年以下の懲役に処する。
監禁罪の保護法益(=守っている権利や自由)は、「身体の場所的移動の自由」であり、強制的に移動させられれば強要罪に、移動を妨害させられれば監禁罪が成立する関係にあります。
監禁罪のいう「監禁」とは、一定の場所から脱出することを不可能、或いは著しく困難にすることによって、場所的移動の自由を制限することをいいます。
イメージしやすい例としては、部屋に鍵を掛けて物理的に出られないようにする行為が挙げられます。
物理的な方法のみならず、心理的な方法による監禁も存在します。
例えば、入浴中の女性の衣服を奪い、羞恥心を利用し浴場からの脱出を心理的に困難にさせることも監禁罪のいう「監禁」に当たるということになります。
他には、監禁場所の施錠を外して外に脱出できる場合であっても、既になされた脅迫行為や脱出後の後難に対しての恐怖心からその場を脱出できなくさせるケースも監禁罪の「監禁」にあたるケースといえます。
本件のような走行する自動車の中に留めさせる行為も監禁罪の「監禁」に当たります。
車の内側から鍵を開錠することは構造上可能ですが、実際に走行する車から脱出するという行為は怪我をするおそれが非常に高いので、「離れようと思っても離れられない」状態に陥っていることが理由です。
では、その「監禁」の前に書かれている言葉である「不法に」とはどういったことを指すかというと、監禁行為が一般的に許容される場合が多い(例:逮捕など)ことから、法益侵害の危険のある監禁行為である場合に監禁罪が成立するという意味を明記しているに過ぎません。
~監禁行為で怪我をしたら~
VさんがAさんの監禁行為によって怪我を負った場合はどのような罪に問われるのでしょうか。
刑法第221条(逮捕等致死傷)
前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
刑法第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法205条(傷害致死)
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。
監禁により人に怪我を負わせたり、死亡させた場合には刑法221条に当たります。
「傷害の罪と比較して、重い刑」とは、監禁致傷罪の場合は傷害罪、監禁致死罪の場合は傷害致死罪の刑罰と比較することになります。
結果として、監禁致傷罪は「3月以上15年以下の懲役」、監禁致死罪は「3年以上の有期懲役」に処されることとなります。
今回のケースの場合、捜査機関がAさんの行為を認知するきっかけとしては当事者が警察に被害を申し出る以外に考えにくいため、Vさんが警察に被害を申し出て初めて刑事事件として扱われることになるでしょう。
Aさんとしては、知人であるVさんと自ら連絡を取り、謝罪などを行いたい筈です。
しかし、刑事事件の両当事者が事件後直接接触することは、被害者の被害感情が一層峻烈になるなど、却って事件を悪化させる場合もあります。
この点、弁護士が刑事事件加害者と被害者の間に入ることで、事件解決をスムーズに進めることができる可能性が高まります。
もしも刑事事件化してしまったとしても、弁護士という第三者を通じてであれば、謝罪の場をもってもよいと考えてくれる被害者の方も多いです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件の経験豊富な弁護士が多数在籍しております。
被害者が警察に被害届を出すと言ったものの、その後警察が実際に動いているのか分からないなど不安を抱え続ける前に、まずは弁護士にご相談下さい。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、事務所にて初回無料相談を行っております(24時間体制での相談のご予約を受付中。)。
また、既に逮捕されている場合には、ご家族やご友人のご依頼で初回接見サービスも承っております。