盗品の売却を代行して逮捕

盗品の売却を代行して逮捕

盗品売却を代行して逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

滋賀県甲賀市に住むAさんは、友達であるBさんから、「滋賀県甲賀市にある古書店で本を万引きしたけど、自分の趣味に合わなかった。本自体に価値はあるようなのでどうにかうまく処分できないか」という相談を受けました。
Bさんが「本をうまく売ってくれれば、代金の2割はお礼にあげるよ」と言っていたため、AさんはBさんから本を預かると、滋賀県甲賀市内にある別の古書店で50万円で売却し、Bさんからお礼として代金の2割をもらいました。
数日後、本が盗まれたことに気が付いた古書店が滋賀県甲賀警察署に被害届を提出。
捜査の結果、Bさんは本を盗んだことによる窃盗罪で逮捕され、さらにAさんは盗品を売却したとして盗品等関与罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、自分は売却を代行しただけなのに逮捕されるのかと不思議に思い、家族の依頼を受けて接見に訪れた弁護士に、自分にかけられている容疑について詳しく聞いてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・盗品の処分は犯罪?

盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物(盗品等)に関する犯罪のことを、盗品等関与罪といいます。
盗品等関与罪の中身としては、盗品の無償譲受、運搬、保管、有償処分あっせんといった行為が含まれ、これらは刑法に規定があります。
盗品等関与罪とまとめて呼ばれるものの、行為によっては量刑に差があり、特に盗品の無償譲受とその他の犯罪では以下の通り量刑に差があります。

刑法第256条
第1項 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。
第2項 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。

条文のとおり、盗品等無償譲受罪(刑法第256条第1項)よりもその他の類型による関与(同条第2項)の方が法定刑が重く規定されています。
これは、盗品等関与罪のなかには所有者の盗品に対する私法上の追求権行使を困難にする、つまり、盗品の持ち主がその盗品を追跡することを困難にしてしまう犯罪だけでなく、窃盗犯人等(本犯)の利益関与・本犯助長性をも内容としているものがあるからだと考えられています。
刑法第256条第2項で定められている盗品への関与においては、追求権だけの侵害ではなく、利益関与・本犯助長性まで認められるので、同条第1項の盗品等無償譲受罪より罪が重くなっていると考えられます。
たとえば、盗品がお金になると思えば本犯がまた窃盗をしてしまう可能性がありますし、本犯の為に運搬保管した場合はその後の行為が格段にやりやすくなるおそれがあります。
このような理由から刑法第256条第2項が同条第1項より重く処罰されているのです。

本件では、Bさんが古書店盗んだ本の売却をAさんに依頼していることから、第2項の有償処分あっせん罪の成立が問題となります。
盗品等の有償処分罪の成立要件は、①前項に規定するもの(盗品等)の、②有償の処分のあっせんをしたことです。

まず①については、判例によれば、「盗品等」とは財産に対する罪によって取得した財物で、被害者が法律上追求し得る権限を有する物をいいます(大判大12.4.14)。
典型的には窃盗罪、詐欺、恐喝によって取得した財物です。
他方、賄賂は収賄罪が財産犯ではないので「盗品等」にはあたりません。
また、私法上の規定により所有者が所有権を失ってしまう場合にも「盗品等」とはされません。
例えば、即時取得、加工や添付といった規定が適用されるときは盗品性が失われます。

本事例ではAさんはBさんが盗んだ本について売却という処分行為をしています。
よって、窃盗による財物を対象としています。
したがって、①の要件を満たします。

次に②についてです。
有償の処分のあっせんとは、盗品の有償的な法律上の処分行為を媒介、周旋することいいます。
法律上の処分は、売買や交換などが典型です。
この処分が有償かどうか問題であって、あっせんの有償無償は問題となりません。
本事例では、Aさんは別の古書店に売却して売買成立に関与しているといえるので、法律上の処分を媒介しているといえます。
また、このあっせんによってAさんはその代金の2割がもらえるとのことですが、上記の通り問題となりません。
よって、②の要件を満たします。

以上から、Aさんには盗品等有償処分あっせん罪が成立すると考えられるのです。

・盗品等関与事件と弁護士

盗品等関与罪については、窃盗行為などをした本犯とは異なって被害者とは間接的な関係しかありません。
そこで自らの情報だけで示談交渉することは容易ではなく、弁護士に依頼することで示談交渉から示談成立に至る可能性は高まると思われます。
また、盗品等関与罪のうち有償処分あっせんの法定刑は10年以下の懲役であることから、決して軽い罪ではなく、積極的な行動が求められます。
このような盗品等関与罪でご相談の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご連絡下さい。

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