いじめをきっかけに児童ポルノ製造事件に
いじめをきっかけに児童ポルノ製造事件に発展したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
滋賀県大津市にある高校に通っている16歳の女子高生Aさんは、同級生であるVさんを友人らといじめていました。
ある日Aさんは、Vさんを下着姿にしてスマートフォンで写真を撮り、それをメッセージアプリなどを通じて仲間内で共有するといったいじめを行いました。
耐え切れなくなったVさんが両親にいじめについて話したことをきっかけに、Vさんらは滋賀県大津警察署に相談をしました。
その結果、Aさんは児童ポルノ製造を行ったとして、滋賀県大津警察署で話を聞かれることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)
・いじめをきっかけとした少年事件
文部科学省の「令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」という統計によると、令和元年度に認知された小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめは、61万2,496件であり、前年度よりも6万8,563件増加したとのことです。
認知されたいじめの内訳としては、小学校でのいじめが48万4,545件、中学校でのいじめが10万6,524件、高等学校でのいじめが1万8,352件、特別支援学校でのいじめが3,075件となっています。
そして、この認知されたいじめの態様のうち、パソコンや携帯電話等を使ったいじめは1万7,924件(前年度1万6,334件)で、いじめの総認知件数に占める割合は2.9%だったようです。
今回のAさんのケースでも、スマートフォンが用いられています。
今回のAさんは、同級生のVさんの下着姿をスマートフォンのカメラで撮影し、それをメッセージアプリなどを通じて仲間内で共有していたようです。
18歳未満の児童の下着姿や裸の姿などの写真は、児童ポルノ禁止法にいう「児童ポルノ」に当たる可能性があります。
児童ポルノ禁止法第2条第3項
この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
第1号 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
第2号 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
第3号 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
こういった児童ポルノは、製造(例えば撮影することで「児童ポルノ」に該当する写真を作り出すことなど)や所持、提供が禁止されています。
例えば、以下の条文では提供目的の児童ポルノの製造(第3項)や、提供以外の目的での児童ポルノの製造(第4項)が禁止されています。
児童ポルノ禁止法第7条
第3項 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
第4項 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
こうした児童ポルノ禁止法違反は、児童ポルノの製造や所持、提供する人が被害者と同様児童であっても同性であっても関係なく成立します。
ですから、いじめや嫌がらせで児童である被害者を下着姿や裸姿にしてその様子を撮影すれば「児童ポルノ」を製造していることになり、児童ポルノ禁止法違反として少年事件化する可能性があるということになるのです。
そして、こうしたいじめの場合、今回のAさんのケースのように、製造した児童ポルノを仲間内で拡散してしまっているというケースも想定されますが、その場合、児童ポルノの提供という、製造とはまた別の犯罪に当たる可能性が出てきます。
いじめという言葉によって、なかなかそれが犯罪であり、少年事件・刑事事件に結びつく可能性のある行為であるとイメージできない人もいるかもしれません。
しかし、いじめの態様次第では、犯罪が成立して捜査機関が介入するケースも当然考えられます。
だからこそ、少年事件・刑事事件になりそうだ、少年事件・刑事事件化してしまったとお悩みの際は、お早めに弁護士に相談・依頼されることをおすすめいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、いじめをきっかけに児童ポルノ禁止法違反事件などの少年事件・刑事事件に発展してしまったというケースについても、ご相談・ご依頼を受け付けています。
まずはお気軽に、弊所弁護士までご相談ください。