火事の原因が自分でなくても犯罪に?
火事の原因が自分でなくても犯罪に問われてしまったという事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、滋賀県甲賀市にあるショッピングモールで警備員をしています。
その日、Aさんは夜間警備の担当でしたが、館内を詳しく見回ることを面倒に感じたAさんは、見回りをしたふりだけして、実際は館内の見回りをさぼってしまいました。
しかしその夜、ショッピングモールに入っているある飲食店の厨房から出火し、最終的にショッピングモールを半焼させる火事となってしまいました。
火事の原因は飲食店の従業員の火の消し忘れでしたが、Aさんがきちんと見回りをしていれば、火事は止められたはずだったことが発覚しました。
そして、Aさんは滋賀県甲賀警察署に、業務上失火罪の容疑で話を聞かれることになりました。
Aさんは、「自分が火事の原因を作ったわけでもないのに、なぜ自分が犯罪に問われるのだろうか」と不思議に思い、滋賀県の刑事事件にも対応している弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・「失火罪」とは?
火事に関連する犯罪というと、放火罪がイメージされやすいですが、火事は故意に起こされるものだけではありません。
今回の事例のショッピングモールの火事の原因のように、火の消し忘れなどの不注意によって火事が起こることもあります。
そういった不注意による火事では、刑法にある「失火罪」という犯罪が問題となります。
刑法第116条第1項
失火により、第108条に規定する物又は他人の所有に係る第109条に規定する物を焼損した者は、50万円以下の罰金に処する。
「第108条に規定する物」とは、「現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑」であり、「第109条に規定する物」とは、「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑」のことを指します。
「失火」とは、過失によって火事を起こしてしまうことを指しており、すなわち不注意によって火事を起こしてしまった人にはこの失火罪が成立するということになるのです。
今回のAさんが問われているのは単なる失火罪ではなく業務上失火罪という犯罪です。
業務上失火罪は失火罪の一種であり、刑法では以下のように定められています。
刑法第117条の2
第106条又は前条第1項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときは、3年以下の禁錮又は150万円以下の罰金に処する。
業務上失火罪は、「刑法第116条」「の行為」=失火罪に該当する行為が、業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときに成立します。
この場合の「業務」とは、職務として火気の安全に配慮すべき社会生活上の地位を指すとされています。
仕事上火気を扱う職、例えば調理に火を利用する調理師や、火気に注意が必要な石油販売業者などが挙げられます。
「業務上必要な注意を怠った」、「重大な過失」があったという責任が追加される分、先ほど確認した単純な失火罪よりも重い刑罰が設定されていることが分かります。
単なる失火罪の場合は罰金刑のみの規定でしたが、業務上失火罪では禁錮刑も選択されうることから、業務上失火罪で起訴されれば公開の法廷で裁判を受ける可能性もありますし、有罪となれば刑務所へ行くことになる可能性もあるということになります。
・火事の原因が自分でなくても犯罪に?
さて、今回の事例のAさんは、火事の原因となった火を直接扱う立場や業務にあるわけではありません。
火事の原因は飲食店の火の消し忘れだったことから、Aさんが直接火事の原因を作ったわけではないようですが、Aさんに業務上失火罪は成立しうるのでしょうか。
過去の判例によれば、業務上失火罪における「業務」とは、直接火事の原因となった火を扱う業務だけでなく、「火災の発見・防止を職務内容とするもの」についても含まれるとされています(最判昭33.7.25)。
つまり、Aさんのように、夜間警備をしなければいけないのにその職務を怠ったことで出火を見逃してしまった場合には、それが業務上失火罪の「業務上必要な注意を怠った」ことと認められうるのです。
そうなれば、Aさんにも業務上失火罪が認められる可能性が十分あるということになります。
このように、原因となった業務を直接行っていない者であっても、刑事事件の被疑者となりえます。
そのような刑事事件の当事者となってしまった場合、どのような対応をすべきなのか、そもそも自分がどうして被疑者となっていうのか分からないと困ってしまうかもしれません。
そんな時こそ、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士によるサービスをご利用ください。
弊所では、弁護士による初回無料法律相談や初回接見サービスをご用意しております。
お問い合わせは0120-631-881まで、お気軽にお電話ください。