個室マッサージ店で風営法違反①~無許可営業

個室マッサージ店で風営法違反①~無許可営業

Aさんは、滋賀県長浜市で男性向けの個室マッサージ店を経営していました。
そのマッサージ店は、表向きはあくまでマッサージを行う店として営業していましたが、実際には、一定額以上の料金を支払った客に対して性的サービスを提供していました。
ある日、滋賀県長浜警察署の警察官がやってきて、Aさんや従業員は、風営法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの個室マッサージ店が性的サービスを提供していると通報があり、そこから捜査されていたようです。
Aさんは、家族の依頼によって接見に訪れた弁護士に、風営法のどの部分に違反しているのか、見通しはどういったものになるのかを詳しく聞いてみることにしました。
(※令和元年6月18日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・風営法違反

風営法とは、正式には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」という名前の法律です。
その名前の通り、風営法は、風俗営業の規制を行い、その健全化・適正化を促進するための法律です。
風営法のいう「風俗営業」の中には、「店舗型性風俗特殊営業」というものが設けられています。

風営法2条
1項 この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。

2~5項 略

6項 この法律において「店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
1 浴場業(公衆浴場法(昭和23年法律第139号)第1条第1項に規定する公衆浴場を業として経営することをいう。)の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業
2 個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業(前号に該当する営業を除く。)
3 専ら、性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興行その他の善良の風俗又は少年の健全な育成に与える影響が著しい興行の用に供する興行場(興行場法(昭和23年法律第137号)第1条第1項に規定するものをいう。)として政令で定めるものを経営する営業

1号に該当するのがいわゆる「ソープ」等であり、3号に該当するのがいわゆる「ストリップ」等です。
今回のAさんが実質的に経営していたような、個室で性的サービスをする風俗店は、この条文の2号に当てはまります。
いわゆる「個室ヘルス店」等が風営法2条6項2号のいう「店舗型性風俗特殊営業」に当てはまるということになります。

・無許可営業

先ほど確認したように、Aさんは表向きは個室マッサージ店として、実質的には風営法の「店舗型性風俗特殊営業」を経営していたということになります。
つまり、Aさんは風営法の規制対象となる「風俗営業」をしていたということになりますから、その営業は風営法にのっとったものでなければならないということになります。
そして、風営法では「風俗営業」を営業する際、許可を取ることを必要としています。

風営法3条1項
風俗営業を営もうとする者は、風俗営業の種別(前条第1項各号に規定する風俗営業の種別をいう。以下同じ。)に応じて、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。

つまり、この規定にある各都道府県の公安委員会の許可を受けずに「風俗営業」を行うことは、無許可営業であるとして風営法違反となるのです。
Aさんは、実質的に「風俗営業」を行っていることから、本来であればこの許可を受けて営業をすることが必要です。
しかし、Aさんは無許可営業をしていますから、まずはこの点について風営法違反が成立することが考えられるのです。

無許可営業による風営法違反の法定刑は、「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」となっています(風営法49条1号)。

では、無許可営業以外にAさんに成立する可能性のある風営法違反はないのでしょうか。
次回の記事で取り上げます。

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