控訴・上告

1 控訴

(1)控訴とは

控訴審は、「事後審」と言われます。事後審とは、裁判を新しくやり直すのではなく、第1審判決が妥当かどうかを見直しする裁判のことをいいます。

そのため、第一審の判決書が控訴審の出発点となります。第1審判決が不当であると主張するためには、第一審判決書に現れた事実認定の合理性や訴訟手続に違法はないか、法令解釈ないし適用に誤りはないかなどを検討していくこととなります。

 

(2)控訴までの手続き

控訴の提起期間は14日で、判決の宣告があった日から進行します。控訴提起期間は、裁判が告知された日から進行しますが、初日は算入しません。

控訴申立書を提出した後、控訴審裁判所から「控訴趣意書」という書面を提出する期限を控訴申立人に通知されますので、その期限内に、控訴趣意書を控訴審裁判所に提出します。「控訴趣意書」には、控訴理由に当たる理由を記載します。

 

(3)控訴の要件

控訴できるのは次のような場合に限られます。

  1. 訴訟手続の法令違反
  2. 法令適用の誤り
  3. 刑の量定が不当であること
  4. 判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があること
  5. 後述する再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること
  6. 判決があった後に刑の廃止もしくは変更または大赦があったこと

 

(4)控訴した場合の量刑

検察官が控訴しない限り、第一審よりも重くなることはありません。

これは、被告人が第一審よりも不利益な結果になることをおそれて控訴権の行使を差し控えることのないように、被告人の控訴権の行使を保障したものです(「不利益変更禁止の原則」といいます)。

 

2 上告

(1)上告とは

上告とは、高等裁判所のした第一審又は第二審の判決に対する最高裁判所への上訴をいいます。上告審は、控訴と同じく事後審であり、最終的な違憲審査と法令の解釈を統一する法律審ですが、同時に個々の事件における適正な救済を図る役割も担っています。

 

(2)上告の要件

憲法違反と判例違反です(刑事訴訟法405条)。しかし、この違反の主張を認めてもらうのは難しいです。

もっとも、最高裁判所の職権で破棄される可能性もあり、実際には事実誤認や量刑不当を主張して、職権発動を求める上告の例が多くみられます。

 

(3)上告の手続き

上告審の手続きは、控訴審における手続きとほぼ同様です。

上告の提起期間は14日であり、上告申立人は指定された期間(通知が届いてから28日以上の定められた期間)内に上告趣意書を提出しなければなりません。

 

3 再審

(1)再審とは

確定裁判における事実認定の誤りを正すもので、有罪判決が確定した人を救済するために使われるものです。

上訴とは、まだ確定していない判決に対して行われる点で異なります。

 

(2)再審の要件

主に、3つに大別されます。

  1. 確定判決によって原判決の証拠が偽造、変造又は虚偽であることが証明された場合
  2. 新証拠が発見された場合
  3. 確定判決によって関与した裁判官などに職務犯罪のあったことが証明された場合

実際には、再審請求のほとんどが②を理由としたものです。

ただし、実務上、滅多に認められるものではありません。

 

(3)再審の裁判の流れ

裁判所は、再審請求に理由がある場合、再審開始決定を行います。

再審開始決定がなされると、再審で改めて問題となる事件について、有罪無罪の判断がなされます。

一方で、裁判所が再審請求を認めない場合もあります。この場合、裁判所は請求棄却決定をします。

 

(4)再審の裁判について

再審の審理を終えたときは、裁判所は無罪か有罪の裁判を新たにしなければなりません。

この裁判においては、原判決の刑より重い刑を言渡すことはできません。

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