大津市の監護者性交等事件を相談②

大津市の監護者性交等事件を相談②

~前回の流れ~
滋賀県大津市に住んでいるAさんには、妻のBさんと14歳の娘Vさんがいます。
ある日、Vさんがなかなか帰宅せず、不審に思ったBさんがVさんの通っている中学校に確認の電話を入れたところ、Vさんが児童相談所に保護されていると言われました。
驚いたBさんが児童相談所に問い合わせたところ、Vさんが学校でAさんから性交されたと相談したため、学校から児童相談所に通告され、保護するに至ったとのことでした。
児童相談所からは、検査の結果等も見るが今のところ滋賀県大津警察署に通報する予定であることも伝えられました。
それを聞いたAさんとBさんは、刑事事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・監護者性交等罪

前回の記事では、平成29年の刑法改正で監護者性交等罪が新設されたことに触れ、他の犯罪との比較を行いました。
今回の記事では、より詳しく監護者性交等罪について触れていきます。
まずは、監護者性交等罪の条文をもう一度確認してみましょう。

刑法179条2項(監護者性交等罪)
18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第177条の例による。

※注※
刑法177条(強制性交等罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

条文を見ると、監護者性交等罪が成立するには、①18歳未満の者に対して、②その者を現に監護する者が、③監護する者であることによる影響力があることに乗じて、④性交等をする、ということが必要とされています。

①18歳未満の者に対して
これは文字通り、18歳未満の者に対して行為を行うということを指します。
「者」とあるだけですので、性別は問われません。

②その者を現に監護する者が
①が被害者についての条件であったのに対して、こちらは加害者となる者についての条件です。
ここでいう「監護」とは、保護・監督することを言います。
つまり、被害者である18歳未満の者を現在保護・監督している者ということになります。
最もイメージされやすい監護者は、その18歳未満の者と同居している親でしょう。
なお、同居しているかどうか、生活費は負担しているかどうかといった具体的な生活にかかわる状況から判断し、同居している親以外の者が監護者と認められる場合もあることに注意が必要です。

③監護する者であることによる影響力があることに乗じて
これは、監護者であるという立場を利用して性交等を行うことを指します。

強制性交等罪が成立するために、性交等の際に暴行や脅迫が用いられたことを要するのに対して、監護者性交等罪の成立には、そうした暴行・脅迫の存在は求められません。
これは、監護者とその監護を受けている者いう立場上、被害者が生活するうえで加害者に頼らなければならないという状況が多いということや、DV等が存在していた場合には事後的な報復をおそれてしまう可能性があること、被害者が幼く知識がない場合には、そもそも性的な被害に遭っていると分からない可能性があることなどが理由となっています。
こうしたことから、監護者性交等罪では「暴行・脅迫」を用いずとも、監護者という立場を利用していればそれと同等であるという判断をしているのです。

④性交等をする
性交等とは、強制性交等罪と同様、肛門性交や口腔性交といった性交類似行為も含みます。

この①~④を満たした場合、監護者性交等罪が成立するのです。
監護者性交等罪の成立・不成立で問題になりやすいのは特に②③の部分ですが、仮にこの部分が満たされなかった場合には、前回の記事で取り上げた、児童福祉法違反や都道府県の青少年保護育成条例違反といった犯罪が成立すると考えられます。

・監護者性交等罪は重い犯罪

監護者性交等罪は非常に重い罪で、法定刑は御覧いただいた通り、「5年以上の有期懲役」です。
執行猶予を付けることができるのは、言い渡された刑が3年以下の場合に限られます。
したがって、監護者性交等罪は原則として執行猶予を付けることができない犯罪であり、有罪となれば基本的に刑務所に行くことになります。

さらに、犯罪の性質上悪質性が高いと判断されるケースも多く、たとえ被害者である子どもやその親権者等が加害者を許すとしていても実刑判決が下されることもあります。
実際に、被害少女や加害者の妻が執行猶予を求める嘆願書を出していた監護者性交等事件で懲役6年の実刑判決が出たという事例も見られます(大津地判平成30.7.31)。

これだけ重い犯罪であるため、監護者性交等事件の被疑者となってしまったら、すぐに弁護士に相談することが望ましいでしょう。
逮捕や取調べ直後から弁護士のサポートを受けることによって、その後の公判弁護活動にも幅が生まれます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士がご相談に乗らせていただきます。
まずは0120-631-881までお問い合わせください。

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