ペットを連れ去ったら何罪に?

ペットを連れ去ったら何罪に?

ペットを連れ去ったら何罪に問われる可能性があるのかということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事例~

ある日、Aさんが滋賀県長浜市内を歩いていたところ、首輪を付けた小型犬がスーパーマーケットのすぐ前にある柵にリードで繋いであるところを見つけました。
その小型犬は、飼い主であるVさんがスーパーマーケットで買い物をする10分程度の間、外に繋いでおいたVさんのペットの犬でした。
Aさんは、もともと犬を飼いたいと思っていたこともあり、小型犬のリードを柵から外すと自宅へ連れ帰り、自分のペットとして飼育を始めました。
その後、買い物を終えてスーパーマーケットを出てきたVさんは、柵に繋いでおいたはずのペットの犬がいなくなっていることに気が付いて周囲を探しましたが、ペットの犬は見つかりませんでした。
そこで、Vさんは滋賀県木之本警察署に相談したのですが、捜査の結果、Aさんが犬をその場から連れ去っていたことが発覚。
Aさんは、窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・ペットは法律上どう扱われる?

この記事を読んでいる方の中にも、今回の事例に出てくるような小型犬などのペットを飼っているという方がいらっしゃるでしょう。
ペットを家族同様大切にされている方も少なくないと思います。
そういった方にとっては違和感があるかもしれませんが、法律上、ペットのような動物は「物」として扱われます。
ですから、誰かがペットが傷つけても人を傷つけたときのように傷害罪(刑法第208条)は成立しませんし、ペットを連れ去ったとしても人を誘拐したときのように誘拐罪(刑法第224条)は成立しません。
大切にしているペットだからこそ、こういった扱いが腑に落ちないという方もいらっしゃるかもしれませんが、現在の法律上、ペットは「物」として扱われることになるのです。

・ペットを連れ去ったら何罪に?

さて、今回の事例では、AさんはVさんのペットの犬を勝手に連れ帰って自分のペットとしています。
こうしたケースでは、事例でもAさんの逮捕容疑となっているように、窃盗罪が問題になります。

刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

条文を確認すると、窃盗罪が成立するためには①「他人の財物を」、②「窃取」することが必要です。

①の「他人の財物」とは、他人が「占有」する「他人の財物」を意味します。
先ほど触れた通り、法律上ペットは「物」として扱われます。
ですから、Vさんのペットの犬も法律上は「物」と考えられます。
そして、窃盗罪の「財物」は、財産的価値がなくとも、社会通念上刑法的価値に値する主観的・感情的価値があるものであればよいとされます(大判明治44.8.15)。
したがって、例えばVさんのペットの犬が血統書付きの犬などではなくとも、窃盗罪の「財物」といえるでしょう。

そして、②「窃取」するということは、持ち主の意思に反してその物の占有を自分や第三者に移転することを指します。
「占有」とは、財物に対する事実上の支配をいいます。
今回のAさんの事例の場合、犬の飼い主であるVさんは犬のもとを離れてスーパーマーケットの中に行っていることから、Vさんが犬を占有しているかどうか疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、Vさんが犬のもとを離れたのは10分程度という短い時間であり、Vさんとしてもすぐに戻るつもりで犬を柵に繋いでおり、距離的にも近い位置にいます。
こうしたことから、Vさんが一時的にペットの犬と離れていたとしても、Vさんはペットの犬を「占有」している状態であったと考えられるでしょう。
その状況からAさんはVさんの意思に反して勝手に犬を連れ去り自分のペットとして扱っている=犬の支配をAさんのもとに移していると考えられるため、窃盗罪の「窃取」に該当する行為をしていると考えられます。

なお、窃盗罪には条文にある条件以外にも「不法領得の意思」という意思が必要とされています。
「不法領得の意思」を簡単に言えば、持ち主の権利を排除して自分が持ち主のようにその物を利用したり処分したりする意思のことを指します。
今回のAさんは、Vさんのもとからペットの犬を連れ去り、自分のペットとする=Vさんを排除して自分が犬の持ち主のようにふるまう意思をもって行動しているので、この「不法領得の意思」もあったと考えられます。

こうしたことから、Aさんのペットの連れ去り行為は窃盗罪にあたると考えられるのです。

先ほども触れた通り、法律上ペットは「物」として扱われますが、飼い主からすれば家族同然であったりします。
そうしたペットを連れ去られたとなれば、被害感情が大きいことも当然考えられます。
被害者対応なども慎重に行うことが求められますから、刑事事件の専門家である弁護士に相談してみることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、窃盗事件を含む刑事事件を専門的に取り扱っています。
お悩みの際はお気軽に弊所弁護士までご相談ください。

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