司法取引制度(刑事訴訟法350条の2~15)
1 司法取引制度について
司法取引制度は
- 特定犯罪に係る事件の被疑者又は被告人が
- 特定犯罪に係る他人の刑事事件について
真実の内容の供述調書を作成したり、証人として尋問され真実を述べたりする場合に、検察官が供述した者に有利な処分をする制度です。
2 特定犯罪
この制度を利用するためには、自分が「特定犯罪」に当たる罪で捜査をされている必要があり、供述内容も他人の「特定犯罪」に係る事実でなければなりません。
この「特定犯罪」は、法律でどのような犯罪が当たるか明確に定められています。
- 贈収賄、詐欺、背任等
- 組織犯罪処罰法違反、税法・独禁法等の罪
- 大麻取締法、覚せい剤取締法
などの犯罪で、組織犯罪や財政経済犯罪が対象になっています。
3 他人の刑事事件
要求される証言の内容は、「他人」の刑事事件です。
自分の刑事事件の内容を話すだけではなく、他人の刑事事件についての供述が求められます。
4 恩典の内容
他人の刑事事件について真実の供述をした場合には、供述者に恩典が与えられます。具体的には
- 起訴猶予処分
- 公訴取消
- 特定の訴因で起訴すること
- 特定の訴因に変更すること
- 論告において、特定の求刑をすること
- 即決裁判手続の申立てをする事
- 略式命令の請求をすること
が法律で定められています。
5 手続き
この司法取引制度を利用するためには、検察官と協議をした上、合意をする必要があります。
ここで注意していただきたいのは、検察官との協議は、弁護人が一緒にいなければなりません。協議以外の場で他人の刑事事件についての話をしても、恩典を受けられるわけではありません。
検察官との協議に際しては、黙秘権の告知はあるものの、検察官に対し、他人の刑事事件に関する供述をする必要があります。
最終的に検察官との合意に至った場合には、合意書面に弁護人と連署し、供述調書を作成するか証人尋問等で証人になる必要があります。
反対に合意が成立しなかった場合には、検察官は協議の中で聴取した供述を証拠に用いることはできません。しかし、刑事免責制度と異なり、供述から派生した証拠(供述をもとに捜索した際に得られた証拠等)の利用は禁止されていませんから、協議に応じる際には、合意成立の見通しも考えた上で供述しなければなりません。
刑事免責制度については、「刑事免責制度」のページをご参照ください。
司法取引制度は、利用すれば恩典が与えられるという面で、被疑者・被告人に有利な面もありますが、反対に供述がきっかけで、かえって刑事訴追の可能性を高める場合が考えられます。
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