SNSを通じて未成年者誘拐事件に
SNSを通じて未成年者誘拐事件に発展してしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
〜事例〜
会社員のAさんは、SNSを通じて滋賀県東近江市に住んでいるという高校2年生のVさんと親しくなり、個別にメッセージアプリで連絡先を交換し、やりとりをするようになりました。
その中でVさんが「両親と折り合いが悪く家にいるのが嫌だ。このままだと心身を病んでしまいそうだ。家を出たいが行く場所もない」というようなことをたびたびもらすようになったため、Aさんは「家を出ても行く場所がないならうちに来るといいよ」と誘いました。
Vさんはその誘いに乗る形でAさんの自宅へ行き、Aさんは自宅にVさんを泊まらせることにしました。
しかし、Vさんが帰宅しないことを心配したVさんの両親が滋賀県東近江警察署に相談したことで捜査が開始され、捜査の結果Aさんは未成年者誘拐罪の容疑で滋賀県東近江警察署に逮捕されてしまいました。
Aさんは、Vさんを誘拐したつもりはないのに未成年者誘拐罪という犯罪に問われていることを疑問に思い、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・SNSを通じて未成年者誘拐事件に発展
昨今、TwitterやInstagram、Facebookに代表されるSNSが発達しており、スマートフォンなどを持っている方の多くがSNSを活用しているのではないでしょうか。
誰でも気軽に繋がりを持てることは利点でもありますが、今回の事例のように、SNSの繋がりから刑事事件に発展する例も見られます。
今回のAさんは、SNSを通じて知り合った高校生Vさんを自宅に泊めたことから未成年者誘拐罪に問われているようです。
Aさんとしては誘拐するつもりはなかったとのことですが、なぜ未成年者誘拐罪の容疑をかけられているのでしょうか。
まず、未成年者誘拐罪の条文を確認してみましょう。
刑法第224条(未成年者略取及び誘拐罪)
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
刑法第224条で定められている犯罪は、未成年者を略取すれば未成年者略取罪、誘拐すれば未成年者誘拐罪となります。
「略取」とは、暴行や脅迫などを用いて強制的に未成年者を本来の生活環境から離して自分や第三者の元に置くことを指します。
対して、今回のAさんにも容疑がかけられている「誘拐」は、偽計または誘惑を用いて未成年者を本来の生活環境から離して自分や第三者の元に置くことを指します。
つまり、無理矢理未成年者を連れ出したような場合には未成年者略取罪が、騙したり誘惑したりして誘い出したような場合には未成年者誘拐罪が成立することになります。
ここで、今回の事例のようにVさんも同意の上でVさんが本来いるべき生活環境から離れ、Aさん宅へ行ったというような場合でも未成年者誘拐罪の「誘拐」になるのかと疑問を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。
「誘拐」というと誘拐される未成年者の意思に反して連れ出したり、騙して連れて行ったりというイメージが持たれているでしょう。
しかし、先ほど触れたように、未成年者誘拐罪の「誘拐」は、未成年者を誘惑して連れ出すことも含まれています。
今回のAさんは「Aさんの自宅へ行く」という甘言をもってVさんを誘惑し、その本来の生活環境から離しているため、イメージする「誘拐」とは異なっていたとしても未成年者誘拐罪の「誘拐」に当たるということになるのです。
これは、未成年者誘拐罪が未成年者の権利だけではなく、未成年者の保護者が未成年者を監護する権利も守っているためだと考えられます。
つまり、未成年者本人の同意があったとしても、その保護者の同意も得られていなければいけないのです。
今回のようにSNSを通じて起こった未成年者誘拐事件では、未成年者の住所地で被害届が出され、その地域を管轄する警察署が捜査を行なっていることが多いです。
そうなると、逮捕された被疑者自身は縁のない場所に留置されることとなり、被疑者の家族も面会に行くことすら難しいということも珍しくありません。
被疑者本人やその家族の負担を軽減するためにも、まずはその地域に対応できる弁護士に接見してもらうことがおすすめです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、全国13都市に支部があります。
滋賀県にも対応可能ですので、SNSを通じた未成年者誘拐事件やその逮捕にお困りの際は、遠慮なくご相談ください。