即決裁判手続

1 はじめに

通常の刑事裁判の流れは、「刑事裁判の流れ」をご参照ください。

同じ刑事事件といっても、事件の内容によって裁判に必要な時間は変わるはずです。しかし、裁判官の数や裁判所の法廷の数、時間などには限界があります。そのため、罪が重い事件や犯罪を行なったかどうかに争いがあって慎重な判断が必要な事件に十分な時間をかけるためには、比較的罪が軽く、争いのない事件については迅速に終わらせる必要があります。

そこで、法律には即決裁判手続という特別な裁判が定められています。

即決裁判手続とは、事案が明白かつ軽微な争いのない事件について、原則として1日で行う手続きです。

 

2 即決裁判手続にできる条件

即決裁判手続にするためにはいくつか条件があります。

まず、①死刑や無期懲役刑、最低でも1年以上の懲役刑か禁固刑が定められている犯罪でないことが必要です。例えば、不同意性交等罪の場合、法律では「五年以上の有期懲役」と刑罰が定められているので、この条件は満たしません。一方で、窃盗罪の場合、懲役刑について、法律では「十年以下の懲役」となっていますから、この条件を満たします。

次に、②事案が明白かつ軽微かどうか、証拠調べが速やかに終わるかどうかなどを考慮して、即決裁判手続で行うことが相当であることが必要です。例えば、窃盗罪の中でも、単純な万引きであればこの条件を満たしやすいですが、空き巣など複雑なものであればこの条件を満たしにくくなります。

そして、③即決裁判手続で裁判を行うことについて被疑者(犯罪を行なったと疑われている人)の同意があることが必要です。この同意をする場合、検察官から求められた書面で行うことになります。

また、④弁護人が付いている場合は、弁護人も同意するか、同意を留保していることが必要です。

 

3 即決裁判手続の特色

即決裁判手続の場合、必ず弁護人が付いていないといけません。そのため、仮に弁護人が付いていなかった場合、裁判長がその権限で弁護人を付けてくれます。

また、即決裁判手続の場合、懲役刑や禁錮刑を言い渡すためには、執行猶予を付けなければなりません。

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