宝くじの当たりくじ偽造で詐欺・有価証券偽造等事件③
宝くじの当たりくじ偽造で詐欺・有価証券偽造等事件となったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
滋賀県彦根市に住んでいるAさんは、年末に抽選の行われる宝くじを購入しました。
そして当選番号の発表日、Aさんが当選番号を確認すると、自分の購入した外れの宝くじと3等の当たりくじの番号が1つだけ違っていました。
そこでAさんは、「当選番号をごまかせれば当たりくじということにして当選金をもらえるかもしれない」と思いつき、自分の持っている宝くじの番号部分を当選番号に書き換え、X銀行へ持っていくと当選金への換金を要求しました。
しかし、受け付けた銀行員が宝くじの番号部分が通常の宝くじと異なっていることに気づき、滋賀県彦根警察署に通報。
駆け付けた警察官により、Aさんは有価証券偽造等・同行使罪と詐欺未遂罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・偽造・変造した宝くじを使うと…
今回のAさんは、偽造もしくは変造した宝くじを換金しようと考えており、実際に銀行に当たりくじであるとして当選金と交換するよう要求しています。
これは、偽造もしくは変造した宝くじを使用していることになると考えられるため、Aさんには偽造有価証券行使罪もしくは変造有価証券行使罪が成立すると考えられます。
・偽造・変造した宝くじで当選金を要求すると…
さらに、Aさんはその改ざんした宝くじを利用して、いうなれば当選金をだまし取ろうと考えていたわけですから、この行為に詐欺罪が成立すると考えられます(ただし、今回の事例ではAさんのたくらみは途中で発覚してしまっており、当選金をだまし取るまではいかなかったので、詐欺未遂罪が成立することになります。)。
刑法246条(詐欺罪)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
刑法250条(未遂罪)
この章の罪の未遂は、罰する。
詐欺罪のいう「人を欺いて」とは、財物を引き渡させる際にその物を引き渡すかどうか判断するための重要な事項を偽ることであるとされています。
すなわち、その事項が嘘であったなら相手は財物を引き渡さなかった、という事項を偽ることで詐欺罪の「人を欺」くことになるのです。
これを偽って相手をだまし、相手がその嘘を信じたことで財物を引き渡す判断を行い、財物を引き渡す(=「財物を交付させた」)ことで詐欺罪が成立します。
そして詐欺罪には刑法250条に未遂罪の規定がありますから、詐欺罪の実行に取り掛かっていたものの最終的に財物を引き渡させるまではいかなかった場合には、詐欺未遂罪が成立します。
一般に、詐欺罪の実行に取り掛かったといえるタイミングは、「人を欺」く行為を始めたタイミングであるとされています。
今回のAさんは、自分で改ざんした本当は外れくじである宝くじを当たりくじであると偽って銀行に当選金を要求しています。
当然、銀行としては当たりくじであるから当選金という財物を相手に渡すわけですから、本来外れの宝くじであるはずのくじであると分かっていれば当選金を相手に引き渡すことはしないでしょう。
ですから、Aさんの改ざんした宝くじを当たりくじであると偽って当選金を要求する行為は、詐欺罪の「人を欺」く行為であると考えられます。
しかし、Aさんのケースでは、銀行員が宝くじの改ざんに気づいたことから、当選金をだまし取ることなくAさんの逮捕に至っています。
このことから、Aさんには詐欺未遂罪が成立すると考えられるのです。
宝くじの改ざん行為だけでなく、その改ざんした宝くじを使用した行為や、宝くじを使用して当選金をだまし取ろうとした行為にも、それぞれ犯罪が成立してしまうことがわかっていただけたと思います。
刑事事件では、このようにそれぞれの犯罪のことをそれぞれ意図していなくても複数の犯罪が成立する場合もあります。
刑事事件の被疑者となってしまった、ご家族が何らかの刑事事件で逮捕されてしまった、という場合には、速やかに弁護士に相談し、どういった犯罪が成立しうるのか、どういった見通しになるのか相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では24時間いつでも弊所弁護士によるサービスのお問い合わせ・お申込みが可能ですから、まずはお気軽にご連絡ください。