賭博場開張等図利事件と幇助犯
賭博場開張等図利事件と幇助犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事件】
Aさんは知人のBさんが滋賀県米原市内でこっそり賭博場を開こうとしていることを知りました。
Aさんは、Bさんの助けになればいいと思い、周囲にBさんが営業している賭博場の宣伝をして、Bさんの賭博場に人が行くように促しました。
そのおかげもあってか、Bさんは賭博場の経営により多額の利益を上げましたが、その後、滋賀県米原警察署の捜査によって賭博場を経営していることが発覚し、賭博場開張等図利罪の容疑で逮捕されてしまいました。
BさんはAさんが周囲の人に賭博場の宣伝をしていることを知りませんでしたが、捜査が進むにつれてAさんが周囲の人に賭博場に勧誘していたことが発覚し、Aさんも滋賀県米原警察署に呼ばれて話を聞かれることになりました。
Aさんは、「自分は勝手に勧誘していただけだが、なにか犯罪になるのか」と不安に思い、弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです)
・賭博場開張等図利罪
今回の事例では、Bさんが賭博場を営業していたことで賭博場開張等図利罪の容疑で逮捕されており、Aさんもその関連で話を聞かれるようです。
賭博場を開帳して利益を図る行為は、賭博場開帳等図利罪となります。
刑法第186条第2項(賭博場開張等図利罪)
賭博場を開帳し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
そもそも、刑法では賭博をすること自体が賭博罪(刑法第185条)として処罰されることになっています。
それに加えて、賭博場開張等図利罪では、簡単に言えば、その賭博を主催したり運営したりした人を処罰するということになっています。
今回のBさんは、賭博場を経営していたわけですから、この賭博場開張等図利罪にあたると考えられるのです。
Bさんのように、自身がその犯罪をした立ち位置は「正犯」と呼ばれたりします。
・正犯と幇助犯
さて、今回の事例のAさんは、Bさんの主催する賭博の参加者を増やすことで、Bさんの利益を増大させることに役立つ行為をしているといえます。
ですから、Aさんの行為は、Bさん=賭博場開張等図利罪の主犯の行為を手助けしたとも考えられます。
正犯の行為を助けた場合、その手助けした人も共犯として処罰される可能性があります。
共犯には大きく3つの種類があります。
①共同正犯(刑法第60条)
正犯と共同して同一の犯罪に係る行為を行った場合に成立するのが共同正犯です。
共同正犯は正犯=その犯罪を行った人と同じように扱われ、また、その犯罪を構成する行為の一部しか実行していない場合でも、その犯罪全部を共同して行ったとして全体の責任を負うことになります。
この共同正犯が成立するためには、お互いの意思の連絡が必要であると考えられています。
しかし、今回の事例では、BさんはAさんの勧誘活動を知らなかったわけですから、AさんとBさんの間には意思の連絡がなく、Aさんは賭博場開帳等図利罪の共同正犯とはならないと考えられます。
②教唆犯(刑法第61条第1項)
教唆犯は、正犯者をそそのかして犯罪意思を惹起させ、正犯者がその犯罪を実行することで成立します。
つまり、犯罪をする気がなかった人に対して犯罪をする意思を持たせ、その人に犯罪をさせたといった場合にこの教唆犯という共犯の立ち位置になるのです。
教唆犯は正犯の刑を科することとされていますので、受けうる刑罰の重さは実際に犯罪をした正犯が受けうる重さの範囲と同じ範囲で判断されることになります。
今回の事例では、AさんがBさんに賭博場を開帳するようそそのかした事実はありませんので、Aさんの行為に関して教唆犯は問題とならないでしょう。
③幇助犯(刑法第62条第1項)
正犯が犯罪を行うに当たり、その犯罪の実行を物理的・精神的に容易にする行為を行った場合に幇助犯が成立します。
つまり、正犯が犯罪行為をする手助けをすることで、この幇助犯という立ち位置になるのです。
幇助犯は従犯として、正犯の刑を減軽することとされていますから、正犯が受けうる刑罰の重さの範囲よりも軽い範囲で刑罰の重さが決められることになります(刑法第63条)。
今回の事例について考えてみましょう。
Aさんは、賭博場への勧誘活動を行うことでBさんが胴元として行われた賭博場の開帳および利益獲得を容易にしていると評価することができますので、Aさんの勧誘活動は賭博場開帳等図利罪の幇助犯に当たる可能性があります。
なお、先述したように、今回の事例で、もしもBさんとAさんとの間で勧誘活動をすることについて了解があったときには、Aさんは賭博場開帳等図利罪の共同正犯に問われる可能性がありました。
意思の連絡の有無で共同正犯と幇助犯のどちらに問われる可能性があるのか分岐するケースは多く想定されますので、もし犯罪行為に加担してしまったことで被疑者となってしまった際にはこの点を争うことが重要になる場合があります。
こうした部分は専門的な知識や経験がなければ判断しづらい部分ですから、まずは弁護士に相談して見通し等をきちんと把握することが重要です。
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