未成年にかかわる性犯罪~児童ポルノ②
~前回からの流れ~
会社員であるAさんは、SNSで知り合った16歳の女子高生を名乗るVさんと仲良くなり、滋賀県甲賀市のホテルで会うことになりました。
Aさんは、
①Vさんに「エッチしようよ」等と言ってVさんの同意のもと性行為をしましたが、特にお金をあげたり物をあげたりすることはなく、Vさんも要求することはありませんでした。
②Vさんに性行為を求め、Vさんが「3万円ならいいよ」と言ったので、3万円を支払ってVさんと性行為をしました。
③Vさんと性行為をしましたが、その際、Vさんの同意のもと、性行為をしている様子をスマートフォンで録画していました。
④Vさんと同意のもと性行為をしましたが、その後、Vさんが12歳であったことが発覚しました。
その後、Vさんが滋賀県甲賀警察署に補導されたことでAさんとVさんの関係が露見し、Aさんは滋賀県甲賀警察署に逮捕されることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・③のAさんに成立するのは?
前回の記事では、そもそも児童ポルノとはどういったものと定義されているのか、その児童ポルノをどうすることが犯罪となるのかを取り上げました。
今回は、事例の③の行為をしたAさんに成立する児童ポルノにかかわる犯罪を具体的に検討していきます。
まず、AさんはVさんとの性行為をスマートフォンで撮影し、録画しています。
Vさんは16歳ですから、児童買春・児童ポルノ禁止法の「児童」です。
その「児童」であるVさんとの性行為の様子を撮影・録画しているのですから、その動画・写真の内容は「児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態」(児童買春・児童ポルノ禁止法2条3項1号)であるといえるでしょう。
ですから、Aさんの撮影した写真や動画は「児童ポルノ」となり、それを作り出したAさんは、「児童ポルノを製造した」ということができます。
これらのことから、Aさんには児童ポルノを製造したことによる児童買春・児童ポルノ禁止法違反が成立すると考えられます。
さらに、Aさんはその製造した児童ポルノを所持しているわけですから、児童ポルノの所持による児童買春・児童ポルノ禁止法違反も成立することが考えられます。
Aさんが児童ポルノを製造・所持した目的が自身の性的好奇心を満たすためのものであった場合、法定刑はそれぞれ、児童ポルノ製造が「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」(児童買春・児童ポルノ禁止法7条4項)、児童ポルノ所持が「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(児童買春・児童ポルノ禁止法7条1項)となります。
なお、AさんがもしもVさんとの性行為の後、製造・所持している児童ポルノを知人に渡したり、SNSやインターネット上にアップしたりしていた場合には、児童ポルノの提供や公然陳列といった別の児童買春・児童ポルノ禁止法違反が成立します。
そして、こうした行為があった場合には、児童ポルノの製造・所持の目的が自己使用目的ではなく、提供や陳列の目的だったのではないかと疑われる可能性もあるでしょう。
前回の記事で触れた通り、児童ポルノの製造や所持の目的が提供や公然陳列であった場合には、より重い刑罰に処されることになります。
そのため、もしも容疑をかけられている児童ポルノの使用目的が自身の認識しているものと異なる場合には、弁護士のアドバイスを随時聞きながら、慎重に取調べに臨むことをお勧めします。
・児童ポルノ事件の弁護活動
今回の③のケースのような場合には、児童ポルノの被害者である被害児童がどこの誰であるのか特定できるため、弁護士を通じて示談交渉に取り組むことも可能でしょう。
しかし、例えばどこかから児童ポルノをダウンロードして保存し、所持していたような児童ポルノ事件の場合、被害児童が誰か特定できず、謝罪もままならないということも考えられます。
こうした場合には、贖罪寄附や反省文の作成、再犯防止のための対策づくり等を通して寛大な処分を求めていくことが考えられます。
示談交渉ができないときの活動も含めて、刑事事件に強い弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、児童ポルノに関連した刑事事件のご相談・ご依頼も多くいただいています。
児童ポルノを含む性犯罪事件にお困りの際は、お気軽に弊所弁護士までご相談ください。