赤信号無視の危険運転致死事件

赤信号無視の危険運転致死事件

赤信号無視危険運転致死事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
Aさんは,滋賀県彦根市の路上で自動車を運転している最中,赤信号を意図的に無視して交差点に進入し,歩行者のVさんをはねて死亡させました。
近くにいた人が通報したことで,すぐに滋賀県彦根警察署の警察官が駆け付け,Aさんは,自動車運転処罰法違反(危険運転致死罪)の容疑で逮捕されました。
Aさんの家族は,Aさんが逮捕されたことを知ると,弁護士に相談すると同時に,弁護士にAさんの接見に向かってもらいました。
弁護士と接見したAさんは,弁護士から自分のしたことが赤信号無視による危険運転致死罪であることを説明されました。
(フィクションです。)

~赤信号無視による危険運転致死罪~

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(いわゆる自動車運転処罰法)では,一定の危険な態様で自動車を運転して人を死傷させたような場合について,危険運転致死傷罪という重い犯罪を定めています。
例えば,今回Aさんが容疑をかけられている危険運転致死罪が成立する時の例としては,アルコールの影響で正常な運転が困難な状態で自動車を走行させたり,赤信号をあえて無視して運転をしたような場合に,人を死亡させてしまったときが挙げられます。
危険運転致死罪が成立した場合には,1年以上の有期懲役が科せられます(自動車運転処罰法2条1号,5号)。

自動車運転処罰法2条
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。
1 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
3 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
4 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
5 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
6 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

Aさんは,あえて赤信号を無視して交差点に進入しVさんをはねて死亡させているので,このうち5号の「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」にあたり,危険運転致死罪が成立する可能性があるといえます。
ここで,「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し」とは,「殊更」とあるだけに,単純に赤信号無視しただけではこの条文に該当しないことがわかります。
この「殊更に無視」とは,「およそ赤色信号に従う意思のないものをいい,赤色信号であることの確定的な認識がない場合であっても,信号の規制自体に従うつもりがないため,その表示を意に介することなく,たとえ赤色信号であったとしてもこれを無視する意思で進行する行為も,これに含まれると解するべきである。」(最決平成20.10.16)と解されています。
ですから,どのような態様で赤信号無視をしてしまったのかが,危険運転致死罪となるかどうかにかかわってくることになります。

~危険運転致死事件の弁護活動~

交通事故の加害者となり,刑事責任を問われるような場合は,弁護士に相談して示談を試みるなどの対応をすることをお勧めします。
裁判では,情状として,被害者遺族との示談や被害弁償,任意保険や自賠責保険に加入している場合はその支払い状況等を主張していくことが考えられます。
加えて,弁護士は,被害者遺族との示談等以外にも,加害者が交通事故事件を起こしたことと真摯に向き合い反省している情状として,加害者が自ら所有していた車を処分したことや,再犯防止のために交通ルールを学ぶ講習などに参加したことなどの事情があれば,そういった事情も主張していくことになるでしょう。

どういった弁護方針となりそうか,どのような弁護活動が可能かは事件ごとに異なりますので,まずは弁護士に相談されることがおすすめです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,赤信号無視による危険運転致死事件などの交通事故事件のご相談も承っています。
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