立ちションで公然わいせつ罪に?②
立ちションで公然わいせつ罪を疑われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~前回からの流れ~
滋賀県長浜市に住んでいるAさんは、近所の居酒屋で行われた会社の忘年会に参加していました。
Aさんはそこで大量に酒を飲み、酔っぱらっていました。
忘年会が解散となり、徒歩で帰路についたAさんでしたが、外気が冷えていたこともあり、急に尿意を催しました。
しかし、近くにトイレがなく、家までもまだ距離があったことから、Aさんは道端で立ちションをして用を足そうと思いつきました。
そこは大通りで、普段は夜でも人通りも多い道でしたが、たまたまその時間帯は人通りがありませんでした。
Aさんは、「今人がいないし用を足すだけだから大丈夫だろう。もし人が通って見られたとしても、暗いし時間帯も遅いからこちらのことなど構わないで通り過ぎるだろう」と思い、道端で立ちションを始めました。
ですが、通行人WさんがAさんが立ちションしている様子を目撃し、「道端で下半身を露出している男がいる」と滋賀県木之本警察署に通報。
Aさんは駆け付けた警察官に公然わいせつ事件の被疑者として任意同行を求められてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・立ちションで公然わいせつ罪になるのか?②
前回の記事では、Aさんの立ちション行為が公然わいせつ罪の「公然と」に当てはまるだろうということに触れましたが、今回の記事では、まずはAさんの立ちション行為が公然わいせつ罪の「わいせつな行為」といえるのかどうかについて、検討していきます。
Aさんは立ちションをしていたわけですから、たしかに下半身・性器を露出していたといえるでしょう。
しかし、公然わいせつ罪の成立条件である「わいせつな行為」は、前回の記事で挙げたような「その行為者またはその他の物の性欲を刺激興奮または満足させる動作であって、普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反するもの」でなければなりません。
Aさんとしてはなんら性的な目的や意図なくしていた行為であることから、この「わいせつな行為」に当てはまるのかどうかには争いが出てきそうです(もちろん、Aさんが立ちション行為をあえて見せつける意図があったり、他人に排尿行為を見せて興奮するたちであった場合には話が変わります。)。
ここでAさんの行為が公然わいせつ罪の「わいせつな行為」に当てはまると判断されれば、行為と客観的状況を認識しながら立ちションをしてしまったAさんには公然わいせつ罪が成立する可能性が高くなってしまうでしょう。
逆に、Aさんの行為が「わいせつな行為」に当てはまらないとされた場合には、公然わいせつ罪は成立しないことになります。
・立ちションは犯罪なのか?
では、仮にAさんの立ちション行為が公然わいせつ罪にあたらないと判断された場合、Aさんの立ちション行為は何の犯罪にもならないのでしょうか。
実はそういうわけではなく、Aさんには軽犯罪法違反が成立することが考えられます。
軽犯罪法1条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
20号 公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者
26号 街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者
Aさんは大通り=「公衆の目に触れるような場所」で、立ちションをして下半身を露出=「しり、ももその他身体の一部をみだりに露出」しており、立ちションしている姿を見た場合、通常人は「けん悪の情を催」すでしょうから、軽犯罪法1条20号に該当するでしょう。
また、立ちション行為自体も軽犯罪法1条26号で禁止されていることから、こちらも当てはまることになるでしょう。
昨今、強制わいせつ罪の性的意図が不要であるという判例(最判平成29.11.29)もでてきているため、公然わいせつ事件を含むわいせつ事件は、事例に即して判断をしていく必要があると考えられます。
今回のような立ちション事件についても、一概に公然わいせつ罪に当たるか当たらないかの判断ができなくなってきていると考えられるのです。
こうした時こそ、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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