収賄罪の種類を弁護士に相談
収賄罪の種類を弁護士に相談するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
〜事例〜
Aさんは、滋賀県大津市で民間の車検場を経営している自動車検査員です。
ある日、Aさんは、車検場に訪れた客Xさんから、「報酬を渡すから、この車の車検を通したことにしてくれないか」と頼まれ、Xさんの依頼通り、実際には既定の車検をしていないにもかかわらず、Xさんの車について車検が通ったという保安基準適合証を偽造しました。
しかしその後、Xさんが交通違反によって滋賀県大津警察署に摘発されたことをきっかけにして、AさんがXさんからの依頼で車検をせずに保安基準適合証を偽造していたことが発覚。
Aさんは、滋賀県大津警察署に加重収賄罪などの容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族はAさんの逮捕と容疑をかけられている罪名を聞き、なぜ公務員でないAさんが収賄罪で逮捕されたのか、そもそも加重収賄罪とはどういった犯罪なのかと不安になり、滋賀県の刑事事件に対応している弁護士に相談することにしました。
(※令和2年12月2日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・収賄罪には種類がある?
収賄とは、簡単に言えば(公務員が)賄賂を受け取ることです。
そしてその(公務員の)収賄行為について刑罰を定めているのが、刑法の収賄罪と呼ばれる犯罪の種別です。
今回のAさんが加重収賄罪という収賄罪の容疑で逮捕されているように、収賄罪と一口に言っても、その種類は多岐にわたります。
今回の記事では、収賄罪の種類がどれほどあるのか、それぞれどういった内容で成立する犯罪なのか確認していきましょう。
まずは、収賄罪と受託収賄罪の条文を見ていきましょう。
刑法第197条第1項
公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。
この場合において、請託を受けたときは、7年以下の懲役に処する。
この条文の前段部分が収賄罪、後段部分が受託収賄罪と呼ばれます。
収賄罪にはAさんの逮捕容疑の加重収賄罪などの様々な種類があることから、刑法第197条第1項前段の収賄罪は、他の収賄罪と区別するために単純収賄罪とも呼ばれます。
単純収賄罪は、公務員がその職務に関して賄賂を受け取るか、賄賂の要求・約束をすることで成立する犯罪です。
この単純収賄罪が収賄罪の基本形であり、他の収賄罪はこの単純収賄罪の加重類型と言えるでしょう。
一般に、「賄賂を受け取ったら収賄罪」というイメージがあるかもしれませんが、賄賂の要求や約束をするだけでも収賄罪が成立することに注意が必要です。
そして、刑法第197条第1項後段の受託収賄罪とは、「請託を受けて」単純収賄罪の行為をした場合に成立する犯罪です。
受託収賄罪にいう「請託」とは、公務員に一定の職務行為を依頼することを指します。
例えば、市役所の職員が「300万円渡すので、その見返りとしてX社の市役所の審査を通してください。」と依頼されてこれを受けた場合、「X社を市役所の審査で通す」という職務行為を依頼され受けていることになりますから、受託収賄罪が成立する可能性が出てくることになります。
これらの収賄罪は、公務員になる前や公務員を辞めた後についても成立する可能性があります。
刑法第197条第2項
公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、5年以下の懲役に処する。
刑法第197条の3第3項
公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。
これらはそれぞれ事前収賄罪、事後収賄罪と呼ばれています。
このように、現在公務員でなくとも収賄罪となる可能性があることにも注意が必要です。
そして、今回のAさんの逮捕容疑である加重収賄罪も確認しましょう。
刑法第第197条の3
第1項 公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、1年以上の有期懲役に処する。
第2項 公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。
「前二条の罪」とは、単純収賄罪、受託収賄罪、事前収賄罪、第三者供賄罪(刑法第197条の2)のことです。
公務員がこれらの収賄罪を犯し、「不正な行為」をしたり「相当の行為をしなかった」りしたときに、加重収賄罪が成立するのです。
「不正な行為」や「相当の行為をしな」いということは、公務員の職務に違反する行為を指します。
例えば、書類の偽造に協力する、あえて議会を欠席する、といった行為が考えられます。
このほかにもあっせん収賄罪(刑法第197条の4)など、収賄罪には様々な種類があり、収賄行為の詳細や経緯、それぞれの立場によって成立する罪名が異なりますが、それを見極めるのは法律の知識・刑事事件の経験がなければ難しいことです。
だからこそ、収賄事件の当事者になったら刑事事件の専門家である弁護士に相談し、自分に容疑がかかっている収賄罪がどういった収賄罪なのか、その見通しや手続き、対応方法について詳しく聞いておくことが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が相談を受け付けていますので、収賄事件にお困りの際はお早めにご相談ください。