代金を支払っても詐欺罪?

代金を支払っても詐欺罪?

代金を支払っても詐欺罪となるのかどうか、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
滋賀県近江八幡市に住んでいるAさんは、医師の診断を受けて睡眠薬を処方されました。
しかしAさんは、「自分の症状にはこれだけの睡眠薬では不足している。もっと睡眠薬をもらわなければならない」と考え、医師からもらった処方箋を自宅で何枚かカラーコピーし、それぞれ別の薬局に提出して睡眠薬を受け取り、代金を支払いました。
その後、全く同じ内容の処方箋がカラーコピーされて提出されていることに近隣の薬局が気づき、滋賀県近江八幡警察署に相談されました。
そして滋賀県近江八幡警察署の捜査の結果、Aさんは詐欺罪の容疑で逮捕されることとなりました。
(※令和元年10月23日京都新聞配信記事(24日に更新)を基にしたフィクションです。)

・代金を支払っていても詐欺罪?

今回の事例のAさんは、詐欺罪の容疑で逮捕されています。
Aさんは、カラーコピーされた処方箋を別々の薬局に出すことで、本来購入できる以上の睡眠薬を手に入れていたようです。
しかし、Aさんは睡眠薬の代金はきちんと支払っているようです。
それでもAさんに詐欺罪は成立するのでしょうか。
詐欺罪の条文を確認しながら検討してみましょう。

詐欺罪は、刑法246条に規定されています。

刑法246条(詐欺罪)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

詐欺罪が成立するには、
①人をだます行為をする(=「人を欺いて」)
②人をだます行為によって相手がだまされる(=「人を欺いて」)
③だまされたことに基づいて相手が財物を引き渡す行為をする(=「財物を交付させた」)
という流れをたどり、さらにこの①~③の一連の流れに因果関係が存在することが必要とされています。

①人をだます行為をする」については、一般に「欺罔行為」と呼ばれています。
この欺罔行為については、単純に人に対して嘘をつくだけでは足らず、その財物を引き渡すという判断をする際に基礎となる重要な事項について偽ることをいうとされています。
つまり、その事実が嘘であるなら財物を引き渡さなかったというような事実について嘘をつくことで、詐欺罪成立のための1つの条件が満たされることになるのです。

次に、「②人をだます行為によって相手がだまされる」ですが、これは一般に「錯誤に陥らせる」というような言い方をします。
先ほど触れた①の行為によって相手がだまされ、勘違いに陥らなければ詐欺罪は成立しません。

そして「③だまされたことに基づいて相手が財物を引き渡す行為をする」ということですが、②で触れたように、相手が①の行為によってだまされたことによって、財物が引き渡されなければなりません。
例えば、①の欺罔行為があったものの、相手がその嘘に気が付きながらも相手をかわいそうに思ってその嘘に乗ってあげた、というような場合には、相手はだまされて財物を引き渡したわけではありませんから、詐欺罪は成立しないということになります(この場合詐欺未遂罪成立する可能性があります。)。

では、今回のAさんについて検討してみましょう。
Aさんは、カラーコピーした処方箋を薬局に提出し、睡眠薬を受け取っています。
まず、処方箋は意思が作成した原本を薬局に提出し、それに基づいて薬を受け取るものですから、本来複製されたものや勝手に作成された物では薬を処方することはできません。
ですが、Aさんはカラーコピーをした処方箋を本物の処方箋のように装って薬局へ提出しています。
処方箋がカラーコピーされたものであると知っていれば、薬局としては睡眠薬をAさんに渡すことはしなかったでしょう。
つまり、Aさんは、薬局が睡眠薬という財物を引き渡す際に基礎となる、処方箋が本物の処方箋なのかどうかという重要な事項について嘘をついていたということになります。
ですから、Aさんは詐欺罪の成立要件のうち、①について満たしていると考えられます。

そして、このAさんのカラーコピーの処方箋の提出によって、薬局は、提出された処方箋が本物であるという勘違いに陥っています。
これが詐欺罪の成立要件のうちの②に該当します。

最後に、薬局は、提出された処方箋が本物であるという勘違いに基づいて、睡眠薬をAさんに引き渡しています。
これによって③の要件も満たされ、さらに①~③の間に因果関係もあると考えられることから、Aさんには詐欺罪が成立すると考えられるのです。

ここで、Aさんは代金を支払っていますが、ここまで見てきた通り、詐欺罪は、交付の際に基礎となる重要な事項を偽って相手をだまし、それによって財物を交付させる犯罪です。
そのため、交付される財物の対価として代金を支払っていたとしても、交付の際に基礎となる重要な事項を偽って相手をだまし、それによって財物を交付させているのであれば、詐欺罪は成立することになるのです。
つまり、代金を支払っていたのだから詐欺罪は成立しない、ということにはならないのです。

このように、一見詐欺罪は成立しないように見える事例でも、法律と突き合わせてみると詐欺罪が成立する事例もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、このような複雑な詐欺事件についても、刑事事件専門の弁護士がご相談にのります。
0120-631-881では、いつでも弊所弁護士によるサービスのお申し込みを受け付けておりますので、遠慮なくお電話ください。

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