動物虐待で刑事事件②~鳥獣保護法違反

動物虐待で刑事事件②~鳥獣保護法違反

滋賀県草津市に住んでいるAさんは、日ごろのストレスを発散するために、近所にたくさんいる鴨を捕まえて虐待しようと考えました。
そこで、Aさんは鴨を捕まえると、くちばしをガムテープで固定し、鴨をひもでベランダに括りつけました。
しかし、ひもがゆるかったためか、しばらくして鴨はAさんのベランダから逃走し、近所のWさんのベランダへたどり着きました。
Wさんは、くちばしをガムテープで巻かれている鴨を見て、動物虐待目的で捕まえられていたのではないかと考え、滋賀県草津警察署へ通報しました。
その後、Aさんは鳥獣保護法違反の容疑で逮捕されることになりました。
(※令和元年7月14日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

前回は、動物虐待事件の多くに適用される動物愛護法違反について取り上げました。
今回はそれ以外の犯罪にも触れていきます。

・鳥獣保護法

報道される動物虐待事件では、前回の記事の事例のような、動物に暴行を加えるなどしてけがをさせたり殺してしまったり、飼育放棄をしたりといった動物虐待の態様が多く、動物愛護法違反が話題となることも多いです。
しかし、動物虐待に関しては、動物愛護法違反以外の犯罪が成立する可能性もあります。
まずは、前回の記事で取り上げた、動物愛護法の動物虐待を禁止する条文を再度確認してみましょう。

動物愛護法44条
1項 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。
2項 愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、100万円以下の罰金に処する。
3項 愛護動物を遺棄した者は、100万円以下の罰金に処する。
4項 前3項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
1号 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
2号 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

この通り、動物愛護法の動物虐待の禁止の条文の対象となるのは、「愛護動物」であることが必要とされています。
しかし、「愛護動物」であるためには、「牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる」であるか、そうでなければ「人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの」でなければいけません。
「人が占有する」とは、簡単に言えば人が管理・支配していることを指しますから、例えばペットなどはこれに当てはまるでしょう。
ですから、全く野生の鳥類などは、動物愛護法の「愛護動物」ではないということになります。

では、今回の事例のように、野生の鳥類を捕まえて動物虐待行為をしたような場合には、どうなるのでしょうか。
ここで、今回のAさんの逮捕容疑である鳥獣保護法違反が成立することが考えられるのです。
鳥獣保護法は、正式名称を「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」といい、名前の通り、鳥獣の保護だけでなく、その狩猟についての規制も定められている法律です。
この鳥獣保護法でいう「鳥獣」は、「鳥類又は哺乳類に属する野生動物」ですから(鳥獣保護法2条1項)、動物愛護法の「愛護動物」でない野生の鳥類等も含まれますから、動物愛護法違反とならない動物虐待行為でも、鳥獣保護法違反となる可能性があるということになるのです。

例えば、鳥獣保護法では、狩猟鳥獣の捕獲を狩猟期間や狩猟区域の外で行った場合、鳥獣保護法違反として処罰する旨を定めています。

鳥獣保護法83条1項
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
2号 狩猟可能区域以外の区域において、又は狩猟期間(略)外の期間に狩猟鳥獣の捕獲等をした者(第9条第1項の許可を受けた者及び第13条第1項の規定により捕獲等をした者を除く。)

動物虐待目的で野生の鳥類を捕まえた場合、狩猟期間や狩猟区域以外での捕獲であるとして、この鳥獣保護法の規定に違反する可能性があります。

鳥獣保護法は動物愛護法に比べて、より耳なじみのない法律かもしれません。
刑事事件専門弁護士が所属する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、こうした耳なじみのないような犯罪・刑事事件にも迅速に対応を行います。
まずはフリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

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