原付の2人乗りで道路交通法違反③
~前回からの流れ~
滋賀県長浜市に住むAさん(17歳)は、原付免許を取得し、50ccの原付を運転していました。
ある日、Aさんは友人のVさんを原付の後ろに乗せ、滋賀県長浜市内を通る道路で2人乗りをしていました。
するとその姿を発見したパトカーで巡回中の滋賀県長浜警察署の警察官が、「原付の2人乗りは道路交通法違反になります。そこの原付、停まりなさい」と声をかけてきました。
捕まってはまずいと思ったAさんは、原付を運転してパトカーから逃げましたが、途中で乗用車と衝突してしまいました。
幸いにも死亡した人はいませんでしたが、Aさんは道路交通法違反(定員外乗車)の容疑で現行犯逮捕されてしまいました。
(※令和元年9月13日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・原付2人乗り…少年事件になる?
前回から触れている通り、原付の2人乗りは道路交通法違反となります。
道路交通法57条1項
車両(軽車両を除く。以下この項及び第58条の2から第58条の5までにおいて同じ。)の運転者は、当該車両について政令で定める乗車人員又は積載物の重量、大きさ若しくは積載の方法(以下この条において「積載重量等」という。)の制限を超えて乗車をさせ、又は積載をして車両を運転してはならない。
(以下略)
道路交通法120条1項10号の2
第57条(乗車又は積載の制限等)第1項の規定に違反した者(第118条第1項第2号及び第119条第1項第3号の2に該当する者を除く。)
※注:道路交通法118条・119条は荷物の積載についての罰則。
このように、原付の2人乗りによる道路交通法違反には罰金5万円以下という刑罰が定められていることから、この道路交通法違反で検挙されれば、刑事事件・少年事件となりうることがわかります。
しかし、こうしたいわゆる交通違反事件の場合、反則金制度と呼ばれる制度の適用により、すぐには刑事事件・少年事件とならない可能性があります。
・反則金制度とは
反則金制度とは、正確には「交通反則通告制度」という制度のことで、軽微な交通違反に関して、反則金を納めることで刑事事件・少年事件の手続きに進むことなく終わらせる制度です(道路交通法125条以下参照)。
一般に「青切符」と呼ばれているのはこの反則金制度の適用を受けた場合の交通違反を指します。
今回のAさんがした、原付の2人乗りという道路交通違反は、この反則金制度の対象となる交通違反です。
そのため、Aさんの道路交通法違反事件が反則金制度の適用を受ければ、反則金を払うことによって少年事件となることを避けることができます(なお、反則金を支払わない等をすれば制度の適用はされず、刑事事件・少年事件となります。)。
・原付2人乗りでは少年事件にならない?
では、原付2人乗りでは絶対に少年事件とならないかというと、そうではありません。
少年事件と刑事事件で異なる点の1つとして、少年事件に虞犯(ぐはん)少年という考え方がある点が挙げられます。
虞犯少年とは、簡単に言えば、今は少年事件を起こしているわけではないものの、環境等から将来犯罪をしたり犯罪に触れる行為のおそれのある少年のことを言い、少年法ではこの虞犯少年についても家庭裁判所の調査・審判を行うことができるとされています。
少年法では虞犯少年に該当すると判断する要件を挙げており、その事由の1つに該当し、環境等を考慮したうえで虞犯少年かどうかが判断されます。
今回のAさんでいえば、原付の2人乗りは反則金制度を適用して少年事件とならなかったとしても、頻繁に夜中に原付を乗り回していた、家に帰っていなかった等の他の事情があれば、虞犯少年として少年事件化することも考えられます。
また、今回のAさんのように、パトカーから停止を求められて逃げ、事故を起こしてしまったような場合で、同乗者や衝突した車に乗っていた人に怪我をさせてしまった/死亡させてしまったような場合には、原付の2人乗りによる道路交通法違反だけでなく、自動車運転処罰法にある過失運転致死傷罪が適用されることも考えられます。
そうなれば、過失運転致死傷罪は反則金制度のようなものはありませんから、すぐに少年事件・刑事事件として立件されることになるでしょう。
このように、たとえ軽微な交通違反がきっかけであったとしても、少年事件として事件化する可能性があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、滋賀県の少年事件にも刑事事件・少年事件専門の弁護士が対応しています。
弁護士へのご相談予約は0120-631-881でいつでも受け付けていますので、お悩みの方は遠慮なくお問い合わせください。