琵琶湖上で監禁罪・強制わいせつ罪に?①

琵琶湖上で監禁罪・強制わいせつ罪に?①

Aさんは、滋賀県大津市にある琵琶湖畔で、友人女性のVさんらと遊んでいました。
AさんはVさんに好意を抱いており、Vさんに何度も水上バイクに一緒に乗るよう誘いをかけました。
Vさんは最初嫌がって断っていましたが、Aさんが何度もしつこく誘ったことからその誘いに折れ、「少しだけなら」とAさんと水上バイクに乗りました。
しかしAさんは、水上バイクを発進させると、Vさんが止めるのも聞かずに湖畔から離れた琵琶湖沖まで出て、そこでVさんに抱き着くと無理矢理キスをしました。
その後、Vさんが滋賀県大津北警察署に相談し被害届を出したことがきっかけとなり、Aさんは滋賀県大津北警察署に監禁罪と強制わいせつ罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和元年9月24日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・強制わいせつ罪

今回のAさんの逮捕容疑は監禁罪と強制わいせつ罪ですが、まずは強制わいせつ罪に簡単に触れていきましょう。
強制わいせつ罪は、刑法176条に規定されている犯罪です。

刑法176条(強制わいせつ罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

強制わいせつ罪で注意しなければならない点の1つが、被害者が13歳未満であった場合、暴行や脅迫といった行為がなくとも、わいせつな行為をしただけで強制わいせつ罪が成立するという点です。
ただし、今回のAさんの事案では、被害者であるVさんはおそらく13歳以上であるため、刑法176条前段にあるように、暴行・脅迫行為を用いてわいせつな行為をした場合に強制わいせつ罪が成立することになります。

さて、今回のAさんはVさんに抱き着きキスをするという行為をしています。
Aさんの行動を見る限り、目立った暴行・脅迫行為はないように見えるため、本当にこの行為が強制わいせつ罪になるのか、と不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、暴行・脅迫と聞くと、殴って言うことを聞かせたり体を押さえつけたりといったイメージがわきやすいです。
しかし、強制わいせつ罪では、「暴行」は相手の反抗を困難にする程度の不法な有形力の行使であると考えられています。
つまり、簡単に言えば相手が抵抗することが難しいように力を加えることです。
今回のAさんはVさんに抱き着いていることから、VさんがAさんを振り払うなどして抵抗することが難しかったと考えられます。
そこでAさんはキスをしているわけですから、暴行によってわいせつな行為をした=強制わいせつ罪にあたると考えられたのでしょう。

なお、ここで注意すべきなのは、キスがなくとも抱き着く行為だけでも強制わいせつ罪が成立する可能性があるということです。
強制わいせつ罪において、「暴行」と「わいせつ行為」は同じ行為であってもよいとされています。
例えば今回の抱き着く行為では、抱き着くことによって相手の抵抗を難しくするという側面(=「暴行」)と、抱き着くことで「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」(名古屋高裁金沢支判昭和36.5.2)(=「わいせつな行為」)という側面があります。
この場合、抱き着く以外の行為をしていなくとも、「暴行」と「わいせつな行為」という条件を抱き着くという行為1つで満たすことになり、強制わいせつ罪が成立する可能性が出てくるのです。

強制わいせつ事件では、被害者の方への謝罪や弁償を伴う示談交渉や、逮捕されている場合の身柄解放活動など、多くの活動が必要になることが多いです。
こういった活動を全てご自身やそのご家族で行っていくことは非常に難しいことですから、刑事事件のプロである弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、強制わいせつ事件を含む刑事事件を多数取り扱っています。
滋賀県の強制わいせつ事件でお困りの際は、遠慮なく弊所弁護士までご相談ください。

次回の記事ではAさんのもう1つの逮捕容疑である監禁罪について触れていきます。

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