【事例紹介】労災かくしの労働安全衛生法違反事件

【事例紹介】労災かくしの労働安全衛生法違反事件

滋賀県で起きた労災かくしによる労働安全衛生法違反事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

東近江労働基準監督署は19日、労働安全衛生法違反(労災かくし)の疑いで、滋賀県甲賀市の製造業(中略)と同社の男性課長(45)を書類送検した。
書類送検容疑は、2020年8月25日、(中略)労働災害があったのに、今年4月28日まで同労基署に報告しなかった疑い。
(後略)
(8月19日 京都新聞 「作業員骨折を労基署に報告せず 労災かくし容疑で会社と課長を書類送検」より引用)

労災かくし

労働災害、いわゆる労災の報告を行わなかったことを労災かくしといいます。
労働災害の報告(労働者死傷病報告の提出)は、厚生労働省令である労働安全衛生規則第97条1項で義務づけられています。
労働災害の報告は義務ですので、報告を行わなかった場合には労働安全衛生法違反の罪に問われることになります。

ここで、労働災害の報告を義務付けているのは労働安全衛生規則ですから、労災かくしをした際の容疑が、労働安全衛生規則違反ではなく労働安全衛生法違反になっているのかと疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
実は、労働安全衛生規則には罰則の規定はありません。
一方で、労働安全衛生法には報告についての規定があり、違反した場合の罰則もこちらの法律で定められています。

労働安全衛生法第100条
1 厚生労働大臣、都道府県労働局長または労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者またはコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、または出頭を命ずることができる。
3 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業者または労働者に対し、必要な事項を報告させ、または出頭を命ずることができる。

労働安全衛生法第120条
次の各号のいずれかに該当する者は、50万円以下の罰金に処する。
5 第100条第1項または第3項の規定による報告をせず、もしくは虚偽の報告をし、または出頭をしなかった者

労働安全衛生法第100条第1項をおおまかに説明すると、労働基準監督署長は厚生労働省令で定められている事項について事業者に報告させることができるということです。
前述しましたように、労働安全衛生規則は厚生労働省令ですので、労働災害の報告については労働安全衛生法第100条でも規定されていることになります。
労働安全衛生法第120条では、第100条第1項、第3項に定められた報告をしなかった場合は、50万円以下の罰金に処すると規定されていますので、労働災害を報告しなかった(労災かくしを行った)場合は50万円以下の罰金が科されることになります。

労災かくし労働安全衛生法違反はあまり耳なじみがないかもしれませんが、今年の6月に和歌山県でも、労災かくし事件が起こっています。
和歌山県の労災かくし事件でも、ご紹介した事例と同様に、会社と社長が労働安全衛生法違反の疑いで書類送検されています。
(6月10日 和歌山放送ニュース 「海南市の測量会社が「労災かくし」で書類送検」より)

労災かくしによる労働安全衛生法違反は、なじみのない刑事事件だけに、どのように対応すべきなのか分かりづらい部分もあるでしょう。
刑事手続自体も当事者だけで対応することに不安を感じるケースが多いでしょうから、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を中心に取り扱う法律事務所です。
刑事事件でお困りの際は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー