自宅に放火して逮捕された事件を参考に、放火罪の既遂時期について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
◇自宅に放火した事件◇
滋賀県草津市に住んでいるAさんは、何もかもが嫌になり、死んでしまいたいと考えるようになりました。
その結果、Aさんは、自分の住んでいるマンションの一室に放火しました。
火は燃え広がってAさんの部屋は全焼することになったものの、マンションの他の住民が早期に通報したことで、Aさんを含め死傷者を出すことなく鎮火しました。
そして、Aさんは滋賀県草津警察署に現住建造物等放火罪の容疑で逮捕されることとなりました。
遠方に住んでいたAさんの親類は、報道によってAさんの起こした放火事件とその逮捕を知りました。
驚いたAさんの親類は、インターネットで刑事事件について調べ、とにかく弁護士に面会に行ってもらった方がよいと判断し、滋賀県の刑事事件に対応している弁護士の所属する法律事務所に連絡を取ってみることにしました。
(※フィクションです。)
◇放火罪の既遂時期◇
前回までの記事で、放火罪の種類と自宅への放火で成立しうる放火罪の検討を行いました。
そこで本日は、放火罪の既遂時期について解説します。
現住建造物等放火罪の条文にもあるとおり、実は放火罪の既遂となるには、単に「放火をした(火をつけた)」というだけでは不十分です。
現住建造物等放火罪や非現住建造物等放火罪、建造物等以外放火罪の成立には、いずれも放火したものを「焼損」したということも必要とされています(建造物等以外放火の場合はこれに加えて公共の危険を発生させることも求められます。)。
では、「焼損」とはどういったことを指すかというと、「火が媒介物を離れ目的物に移り、独立して燃焼作用を継続しうる状態に達した時点を『焼損』とする」と考えられています(最判昭和23.11.2)。
ですから、今回のAさんのように、マンションの一室を全焼させているような場合には「焼損」に至っているといえることは間違いありませんが、部屋の一部だけを焼損した場合も、現住建造物等放火罪が成立すると考えられます。
しかし、窓際のカーテンが燃えただけの場合など、建造物そのものが「焼損」に至っていないような場合には、放火の未遂罪となったり、状況によっては器物損壊罪にとどまったりすることが考えられます。
この判断にも、法律の専門知識が必要とされますから、放火罪が成立するのかどうか、放火したと思っていたのに別の犯罪の容疑がかかって疑問だ、といった場合には弁護士に相談して詳細を聞いてみることが望ましいでしょう。
◇放火事件の弁護活動◇
法定刑を見ていただければ分かるとおり、日本において放火は非常に重い犯罪です。
現住建造物等放火罪にいたっては、死刑や無期懲役といった刑罰も考えられます。
そのため、放火事件では逮捕・勾留によって逃亡や証拠隠滅を防いだ上で捜査されることも多いです。
ですから、弁護士の活動としては、釈放を求める活動をしていくことも考えられるでしょう。
そして、前回までの記事で取り上げたとおり、放火事件ではどの放火罪が成立するのかによって受ける刑罰の重さが大きく異なります。
容疑をかけられている放火罪の内容に間違いがない場合ももちろん取調べへの対応に気を付けなければなりませんが、容疑をかけられている放火罪の内容と自分の認識している事件の内容が異なる場合には、特に注意が必要です。
取調べの初期から自分の認識をきちんと話し、意図しない自白をしないようにするためには、被疑者の権利や刑事事件の手続きの流れ、容疑をかけられている犯罪や自分の認識について把握しておかなければなりません。
そのためには、弁護士とこまめに打ち合わせを行ったり、取調べへのアドバイスをもらったりすることが有効です。
こうした細かいフォローも弁護士の重要な活動の1つとなるでしょう。
~裁判員裁判の対象になる場合も~
さらに、現住建造物等放火罪の場合、死刑・無期懲役の刑罰が定められていることから、裁判が通常の裁判ではなく裁判員裁判という特殊な裁判の形となります。
裁判員裁判は特有の手続きや進行があるため、現住建造物等放火罪で起訴される可能性がある場合には、裁判員裁判にも対応できる刑事事件に強い弁護士のサポートが望まれます。
◇放火事件に強い弁護士◇
放火の罪で警察等の捜査を受けておられる方、ご家族、ご友人が放火の罪で警察に逮捕されてしまった方は、一刻も早く、刑事事件に強い弁護士にご相談することをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、こうした放火事件のご相談・ご依頼も刑事事件専門の弁護士がフルサポートすることをお約束いたします。
放火事件に強い弁護士をお探しの方は、今すぐフリーダイヤル0120-631-881(24時間受付け中)にお問い合わせください。