カスハラで刑事事件①~強要罪
滋賀県高島市に住んでいるAさんは、近所にあるコンビニ店を利用した際、店員Vさんの接客態度に苛立ち、Vさんに対して抗議をしました。
しかし、Vさんが真摯に受け止めていないように感じたAさんは激高し、
①「謝るなら土下座をするのが普通だろう。土下座して謝れ。さもないとSNSにここの店員Vは悪質だと拡散する」と怒鳴りつけ、Vさんに土下座をさせました。
②Vさんのそばにあった棚をたたきながら、「サービスが悪すぎることに対して慰謝料を払え。商品代をただにしろ」などと怒鳴りました。
他の利用客が滋賀県高島警察署に通報したことによって警察官が駆け付け、Aさんは逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・カスハラ?
カスハラという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
カスハラとは、「カスタマーハラスメント」の略語として使われ始めている言葉です。
カスタマーハラスメント、略してカスハラは、その言葉通り、顧客によるハラスメントを指す言葉です。
サービス業などの従業員を相手に、行き過ぎたクレームをつけたり、それを理由に迷惑行為をしたりすることが主なカスハラの内容となっているようです。
セクハラやパワハラと同様、カスハラであっても、態様によっては犯罪となり、刑事事件となる可能性があります。
カスハラなど「●●ハラ」という形で広まっているものは、「個人間のトラブルだ」という印象を抱く方も多く、犯罪や刑事事件化といったところまで想像がつかないという方も多いです。
しかし、今回の事例のAさんのように刑事事件化して逮捕されるに至ったり、さらには有罪判決をうけて実刑=刑務所へ行くことになってしまったりする場合もあることには注意が必要です。
・Aさんに成立する犯罪は?~①の場合
では、今回の事例のAさんがしてしまったカスハラ行為について、成立しうる犯罪として何が考えられるのでしょうか。
まずはAさんが①の行動をとった場合を考えてみましょう。
①の行動をAさんがとった場合、成立が考えられる犯罪としては、強要罪が挙げられます。
刑法223条(強要罪)
命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
強要罪は、しなくてもよいことを暴行や脅迫を用いて強制的に人にさせる犯罪です。
今回のAさんは、店員のVさんに土下座をしていますが、Vさんに土下座をするべき義務はありません。
そしてAさんは、土下座をしなければSNSで店員Vさんの悪評を拡散する、と脅迫しています。
Vさん悪評を拡散されるということは、Vさんにとって名誉を害されることです。
したがって、Aさんは強要罪の成立要件に当てはまることになるのです。
このようにして、Aさんの①の行動は強要罪として刑事事件化しうることがわかります。
次回の記事では②の行動について取り上げます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を専門に扱う弁護士がカスハラに関連した刑事事件のご相談も承っています。
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