帰省ラッシュで渋滞中の交通事故②

帰省ラッシュで渋滞中の交通事故②

~前回からの流れ~
Aさんは、お盆休みの帰省のため、滋賀県近江八幡市内を通る道路で自動車を運転していました。
しかし、帰省ラッシュのために道路はずいぶん先まで渋滞しており、Aさんは1時間強の間、少し動いては停まるといったことを繰り返していました。
Aさんは渋滞にいら立ち、つい、Vさんの運転している前の車に対してパッシングや前後の距離を詰めることを繰り返してしまいました。
そしてその結果、Aさんの車はVさんの車にぶつかる交通事故を起こしてしまいました。
Aさんは、Vさんが通報したことで駆け付けた滋賀県近江八幡警察署の警察官に逮捕され、話を聞かれることになりました。
(※この事例はフィクションです。)

前回の記事で取り上げたように、交通事故の場合、人身事故であるのか物損事故であるのかによって、犯罪となるかどうか、刑事事件となるかどうかは異なってきます。
今回は、それぞれ場合分けをしながらAさんの交通事故に成立しうる犯罪を考えていきましょう。

Aさんは何罪になる?~人身事故の場合

今回の交通事故でVさんが怪我をしていた場合、つまり人身事故であった場合、Aさんには自動車運転処罰法違反が成立することが考えられます。
渋滞中は低速度で運転をしていることが多いですから、渋滞中交通事故で怪我をすることなどあるのか、と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、低速度での交通事故でも、捻挫やむち打ちになることもあり、人身事故となることも十分あり得ます。
ですから、「渋滞中交通事故なのだから怪我はないだろう」と決めつけて軽く考えてしまうことはおすすめできません。

さて、今回のAさんのようなケースで人身事故を起こしてしまった場合、自動車運転処罰法という法律に定められている以下の犯罪が成立する可能性があります。

①過失運転致死傷罪
②準危険運転致死傷罪
③危険運転致死傷罪

①過失運転致死傷罪
過失運転致死傷罪は、過失=不注意によって人身事故を起こしてしまった場合に成立する犯罪で、自動車運転処罰法の5条に定められています。
過失運転致死傷罪の法定刑は、「7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」となっており、相手の怪我が軽い場合には、その上場によって刑が免除することができるとされています。

過失運転致死傷罪の過失=不注意とは、「自動車の運転上必要な注意を怠」ったことを指します。
例えば、今回Aさんは帰省ラッシュの渋滞にいら立って、Vさんの車に対してパッシングをしたり距離を詰めるといったいわゆるあおり運転をしており、その結果交通事故を起こしてしまっています。
道路交通法には、自動車を運転する際に守るべき義務が多く定められていますが、例えばその26条では、車間距離の保持義務を定めています。

道路交通法26条
車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

AさんはVさんのとの車間距離を詰めるあおり運転をしていますから、この義務に違反する=過失があると考えられます。
その結果交通事故を起こしVさんにけがをさせているのであれば、過失運転致傷罪が成立することが考えられるのです。

②準危険運転致死傷罪
準危険運転致死傷罪は、自動車運転処罰法の3条に規定のある犯罪です。
準危険運転致死傷罪は、後述する危険運転致死傷罪と一緒にされることもあります。
この罪は、アルコールや薬物の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがあるのに自動車の運転を行い、その後アルコール等の影響によって正常な運転が困難な状態に陥って人身事故を起こしてしまった場合に成立します。
この準危険運転致死傷罪は人に怪我をさせてしまった場合には「12年以下の懲役」、死亡させてしまった場合には「15年以下の懲役」の範囲内で処罰されます。

今回のAさんがもしも飲酒運転をしていたような場合には、その数値や酔っ払いの具合等によってはこの準危険運転致死傷罪が成立する可能性もあります。

③危険運転致死傷罪
危険運転致死傷罪は、自動車運転処罰法2条に定められている犯罪で、その1号から6号で定めている「危険運転行為」により人身事故を起こしてしまった場合に成立する犯罪です。
今回のAさんのようなあおり運転に関連する人身事故では、行っていたあおり運転が自動車運転処罰法2条4号の「人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」であるかどうかによって危険運転致死傷罪が成立するか否かが判断されることが多いです。
これに当てはまるとされれば、Aさんには危険運転致傷罪が成立すると考えられます。
危険運転致死傷罪の法定刑は相手が怪我をしている場合には「15年以下の懲役」、死亡している場合には「1年以上の有期懲役」となっています。

同じ人身事故でも運転していた当時の状況によってこのように成立する犯罪は異なります。
自分が、家族がどういった犯罪の容疑をかけられているのか、どういった犯罪の容疑をかけられる可能性があるのかを知ることは、対策を立てていくためにも非常に大切です。
帰省ラッシュ渋滞中交通事故を起こしてしまってお困りの際は、交通事故事件も多く扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

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