万引きと微罪処分
万引きと微罪処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
滋賀県草津市に住んでいるAさんは、ある日、近所にあるスーパーマーケットに買い物に出かけた際、合計で1,000円前後の商品をマイバッグに隠し、そのまま精算せずにレジを通り抜ける万引きをしました。
しかし、売り場内でのAさんの挙動に注目していた私服警備員が万引き行為に気付き、店を出たAさんに声をかけたことから万引きが発覚。
警備員はそのまま滋賀県草津警察署に連絡し、Aさんは滋賀県草津警察署で万引き事件の被疑者として取調べを受けることになりました。
Aさんは、今回の万引きが初めての万引きであり、警察で話を聞かれたことから大いに反省し、その足で今後について弁護士に相談しに行くことにしました。
弁護士との相談でAさんは、場合によっては微罪処分という処分で終わり、警察段階で事件が終了する可能性があるという話を聞きました。
(※フィクションです)
~万引きと微罪処分~
まず、今回の事例でAさんがしてしまった万引きという行為は、刑法にある窃盗罪に当たります。
刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
警察は、万引きなどの窃盗罪を含む犯罪の捜査をしたときは速やかに書類及び証拠物と共に事件を検察官に送致しなければなりません。
検察官は、事件の送致を受けた後、被疑者を呼び出して取り調べ、事件を起訴するかしないかを決めるのが通常の手続きです。
しかし、今回のAさんの万引き事件は、警察段階で終了する可能性もあると言われているようです。
警察は、特定の事件に限り、検察に送致することなく刑事手続を警察段階で終了させることができます。
これを微罪処分と言います。
微罪処分は、刑事訴訟法第246条但書に根拠があるとされています。
刑事訴訟法第246条
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。
但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。
この定めを受けて、犯罪捜査規範第198条は次のように定めています。
犯罪捜査規範第198条
捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。
Aさんの万引き行為は、A自身に前科前歴がなく、被害が軽微であり、検察官から送致の手続をとる必要がないと予め指定されていた種類のものです。
ここからさらに弁護士の弁護活動により被害弁償がなされた等の事情があれば、警察官限りで処理される微罪処分とされる可能性があるということなのでしょう。
もっとも、どのような事件が「軽微」と判断されるのか、送致の必要がないと予め指定されているかは、一般には公表はされていません。
本件のAさんも微罪処分で済むかどうかは事前にわかることではありませんし、自分のしようとしていることが微罪処分相当だろうと安易に考えるべきではありません。
また、微罪処分は、あくまでそのように処理することも「できる」というだけのことであって、警察が微罪処分で終わらせなかったとしてもそのことに異議や不服を申し立てることはできません。
更に、仮に微罪処分で処理されても、前歴としては検察庁内に記録が残ります。
被害が軽微であっても同種行為を繰り返したりすると、微罪処分で終わらずに送検され、起訴されて裁判となる可能性も出てくることになります。
~弁護活動~
前述のように、被害が軽いから、前科前歴がないからといって必ずしも微罪処分となるわけではありませんが、迅速に被害弁償等を行っていくことで、微罪処分の獲得の可能性や、送検後に不起訴処分の獲得ができる可能性が高まります。
被害弁償等の被害者への対応や、それらを適切に捜査機関に示して処分について交渉していくことを考えれば、早めに弁護士に相談することが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、万引き事件についてお困りの方のご相談も受け付けていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。