未成年にかかわる性犯罪~強制性交等罪
~前回からの流れ~
会社員であるAさんは、SNSで知り合った16歳の女子高生を名乗るVさんと仲良くなり、滋賀県甲賀市のホテルで会うことになりました。
Aさんは、
①Vさんに「エッチしようよ」等と言ってVさんの同意のもと性行為をしましたが、特にお金をあげたり物をあげたりすることはなく、Vさんも要求することはありませんでした。
②Vさんに性行為を求め、Vさんが「3万円ならいいよ」と言ったので、3万円を支払ってVさんと性行為をしました。
③Vさんと性行為をしましたが、その際、Vさんの同意のもと、性行為をしている様子をスマートフォンで録画していました。
④Vさんと同意のもと性行為をしましたが、その後、Vさんが12歳であったことが発覚しました。
その後、Vさんが滋賀県甲賀警察署に補導されたことでAさんとVさんの関係が露見し、Aさんは滋賀県甲賀警察署に逮捕されることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・強制性交等罪
前回までの記事では、未成年、特に18歳未満の者に関する性犯罪について、Aさんの①~③のケースに沿って取り上げてきました。
今回の記事では、④のケースの場合、どのような犯罪が成立するかを考えていきます。
④のケースでAさんに成立しうる犯罪としては、刑法上の強制性交等罪が考えられます。
強制性交等罪は、刑法改正の際に新設された犯罪で、もともとは「強姦罪」という名前でした。
刑法改正により、旧強姦罪は強制性交等罪となり、男女の性別関係なく被害者の対象となったり、性交だけでなく性交類似行為(口腔性交や肛門性交)も対象となったりしました。
ここで、「強姦罪と同じような内容だったら無理矢理性交等をすることで成立するのではないか」「Vさんは性交等に同意していたのだから、淫行や児童買春にあたったとしても、無理矢理性交等をする強制性交等罪には当たらないのではないか」と考える方がいらっしゃるかもしれません。
強制性交等罪の条文を確認してみましょう。
刑法177条(強制性交等罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
皆さんの思い浮かべる強制性交等罪のイメージとしては、この刑法177条の前段のイメージが強いでしょう。
しかし、今回の④のケースのような場合に問題となってくるのは、刑法177条の後段の条文の方です。
刑法177条の後段の条文では、「13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする」、つまり、13歳未満の者と性交等をした場合には、強制性交等罪とするということが定められています。
条文を見ていただければわかるように、13歳以上の者が被害者の時に強制性交等罪が成立するには性交等の際に「暴行又は脅迫」が用いられていることが必要とされますが、13歳未満の者が被害者となる場合、「暴行又は脅迫」は必要ありません。
すなわち、13歳未満の者と性交等をした段階で強制性交等罪となるのです。
そして、性交等の相手である13歳未満の者が性交等に同意していても強制性交等罪は成立します。
・Aさんは強制性交等罪になる?
今回のAさんの④のケースは、客観的に見れば、Aさんは実は12歳であったVさんと性交をしているわけですから、強制性交等罪が成立しそうです。
しかし、ここで問題となるのは、AさんがVさんの年齢についてどのように認識していたかです。
犯罪が成立するのには、原則として故意=犯罪であるという認識が必要です。
今回問題となっている強制性交等罪で言えば、「性交等の相手方が13歳未満である」という認識を持ちながら性交等をすることが必要とされます。
今回の④のケースの場合、Aさんは当初Vさんが16歳だと認識して性交をしています。
もしもここでVさんについて13歳未満かもしれないという認識なく性交していた場合には、故意がないため、強制性交等罪は成立しないとされる可能性が出てきます(ただし、16歳と思って性交していた場合でも、前回までの記事で取り上げた「淫行」や「児童買春」といった別の犯罪が成立すると考えられます。)。
強制性交等罪の法定刑は5年以上の有期懲役刑となっており、不起訴とならなければ(起訴されてしまえば)、必ず公開の法廷で裁判を受けることになります。
さらに、執行猶予をつけることができるのは、言い渡された刑が3年以下の場合に限られますから、強制性交等罪では執行猶予をつけることも難しいです。
被害者との示談等により、起訴される前に不起訴処分を獲得したり、情状酌量による刑の減軽によって執行猶予獲得を目指したりすることが考えられます。
いずれにせよ、早期から丁寧な準備を行わなければなりませんから、強制性交等事件でお困りの際は早めに弁護士に相談しましょう。
複数回にわたって未成年にかかわる性犯罪を取り上げてきましたが、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所ではこうした性犯罪事件でのお悩みも、刑事事件専門だからこそ安心してご相談いただけます。
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