リンチによる傷害事件
リンチによる傷害事件について、弁護士法人あいち敬意事件総合法律事務所が解説します。
〜事例〜
滋賀県米原市に住んでいるAさんは、友人たち3人で外出していたところ、通行人Vさんとぶつかったことをきっかけに、Vさんと口論になりました。
Vさんが言い返してきたことに腹が立ったAさんらは、3人でVさんを殴る蹴るといった暴行を加え、いわゆるリンチのような形になりました。
それを目撃した他の通行人が滋賀県米原警察署にしたことで警察官が駆けつけ、Aさんらは傷害罪の容疑で逮捕されました。
Vさんは骨折などの大怪我を負いましたが、Aさんとしては「自分はそこまで多く暴行を加えているわけではなく、骨折などは自分のせいではない」と主張しています。
にもかかわらず傷害罪の容疑で逮捕されていることに疑問を感じ、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に相談しました。
(※この事例はフィクションです。)
・リンチと傷害罪
リンチとは私刑のことを指しますが、集団で被害者に暴行することを指すこともあります(集団リンチと呼ばれることもあります。)。
人に暴行をすることで成立する犯罪としてまずイメージされるのは、刑法の傷害罪や暴行罪でしょう。
刑法第204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法第208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
傷害罪と暴行罪は、簡単に言えば人に暴行を振るってその相手に怪我をさせてしまったかそうではないかという違いによってどちらが成立するのかが変わります。
暴行をして相手に怪我をさせれば傷害罪、相手が怪我をするに至らなければ暴行罪ということになります。
当然、一対一で相手に暴行を振るい相手に怪我をさせたケースで傷害罪が成立することに問題はないでしょう。
しかし、今回のAさんの事例のように、複数人でリンチして相手に怪我をさせ、その怪我が誰の暴行かわからないようなケースでは、傷害罪の成立はどのような形になるのでしょうか。
刑法では、共同正犯という考え方があります。
刑法第60条
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
この「正犯とする」とは、大まかに言えばその犯罪をした人と同じ扱いになるということです。
つまり、例えば2人で「共同して」傷害罪を犯せばその2人とも自分自身が傷害罪を犯したと同じ扱いを受けるということになります。
では、共同正犯の「共同して」とはどういった意味なのでしょうか。
共同正犯の「共同して」とは、単に「一緒にやる」ということではなく、犯罪を共同して実行する意思(意思の連絡)があることと、犯罪を共同して実行した事実が必要とされています。
例えば、今回のAさん達の事例について考えてみましょう。
Aさん達は、3人でリンチする形でVさんに暴行を加えていますから、「犯罪を共同して実行した事実」はあると言えるでしょう。
そうなると、「犯罪を共同して実行する意思(意思の連絡)」があるのかどうかということが問題になります。
この意思の連絡については、明示的なものだけでなく黙示的なものでも良いとされています。
今回のAさんのリンチの場合、Aさんらの間でどのような会話や経緯があったかは分かりませんが、Aさんらの中で「Vさんに暴行する」という意思が共通していれば、Aさんらは全員傷害罪の共同正犯となるのです。
すなわち、AさんらはVさんに誰がどのような怪我を負わせたのかということにかかわらず、全員で傷害罪に問われるということになるのです。
刑事事件では、一般の方が疑問に思うようなことも多いです。
弁護士の力を借りることで、その疑問や不安を解消できることもあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、そのサポートができるよう、刑事事件専門の弁護士が迅速に対応を行います。
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