タイヤロックで器物損壊事件
タイヤロックをかけたことで器物損壊事件となったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~ケース~
滋賀県守山市在住のAさんは自宅の駐車場の目の前にVさんの車が駐車されているため、自身の車が駐車場から出ることができない事態がしばしばありました。
Vさんに直接抗議しても、一向に事態は改善されないことに苛立ったAさんは、Vさんの車の車輪にタイヤロックを掛け、Aさんが開錠しない限り、走行できないようにしました。
すると、Vさんが滋賀県守山警察署にそのことを相談し、Aさんは滋賀県守山警察署に呼ばれ、話を聞かれることになってしまいました。
Aさんは、「自分は迷惑をかけられた被害者だ」と思っていますが、Aさんの行為は何か犯罪になるのでしょうか。
不安に思ったAさんは、滋賀県守山警察署に行く前に弁護士に相談してみることにしました。
(事例はフィクションです。)
~タイヤロックで器物損壊罪?~
実は、今回のAさんの行為は、刑法上の器物損壊罪にあたる可能性があります。
刑法第261条(器物損壊等)
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
器物損壊罪の「損壊」とは、割る・破るなどの物理的破壊に限定されることはなく、「物の効用を害する一切の行為」をいいます。
端的には「物の本来の使い方をできないようにさせた」場合をいい、具体的には、飲食店の食器に放尿する行為などが挙げられます。
食器に放尿されても洗えば器に盛ることはできますが、一度放尿された食器で食事をしたいと思う人はいないでしょうから、お客様にお出しすることはできませんので、本来の使い方ができなくなったといえます。
本件についても、AさんがVさんの車にタイヤロックを取り付けた行為は、車の移動を不可能にさせることになり、移動手段という車本来の使い方をできないようにさせたといえ、器物損壊罪に当たると考えられるのです。
もっとも、Vさんの車は後述する「違法駐車」車両です。
違法な物に対する器物損壊行為は許されるのでしょうか。
結論として、法規上違法な物も器物損壊罪の客体になります。
理由としては、器物損壊罪の保護法益はあくまで「物の効用」ですので、適法・違法に関わらず、損壊行為は処罰の対象になるということなのです。
もっとも、器物損壊罪は親告罪であり、被害者の告訴がなければ公訴することができません(刑法第264条)。
起訴される前の段階で、被害者に告訴をしないでもらう又は一旦告訴したものを取下げてもらうことができれば、公訴=起訴されず、前科が付くことはありません。
そのためには、被害者へ謝罪や弁償金、慰謝料の支払いを含めた示談を行うことができるかが分水嶺になります。
逮捕など身柄が拘束されていない場合は自身でも示談交渉は可能ですが、加害者と被害者とが直接会うとなると、互いに感情的になってしまい交渉が難航するどころか事態を悪化させる原因にもなりかねません。
一方、弁護士が間に入る場合、当事者双方の言い分を聞いたうえで、示談締結に向けた最善の活動をすることができます。
刑事事件の解決は、一刻も早い弁護士への相談が肝要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、器物損壊事件の弁護経験もある弁護士も在籍しております。
無料相談のご予約も24時間体制で承っておりますので、まずはお気軽にご相談下さい。
※なお、以下では、本件のVさんの駐車が道路交通法のどの法規に抵触するかを記載致します。
道路交通法
第45条第1項
車両は、道路標識等により駐車が禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、駐車してはならない。ただし、公安委員会の定めるところにより警察署長の許可を受けたときは、この限りでない。
1. 人の乗降、貨物の積卸し、駐車又は自動車の格納若しくは修理のため道路外に設けられた施設又は場所の道路に接する自動車用の出入口から3メートル以内の部分
第119条の2第1項
次の各号のいずれかに該当する行為(第1号及び第2号に掲げる行為にあっては、その行為が車両を離れて直ちに運転することができない状態にする行為に該当するとき又はその行為をした場合において車両を離れて直ちに運転することができない状態にする行為をしたときに限る。)をした者は、15万円以下の罰金に処する。
1. ……第45条(駐車を禁止する場所)第1項……の規定の違反となるような行為