宝くじの当たりくじ偽造で詐欺・有価証券偽造等事件④
宝くじの当たりくじ偽造で詐欺・有価証券偽造等事件となったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
滋賀県彦根市に住んでいるAさんは、年末に抽選の行われる宝くじを購入しました。
そして当選番号の発表日、Aさんが当選番号を確認すると、自分の購入した外れの宝くじと3等の当たりくじの番号が1つだけ違っていました。
そこでAさんは、「当選番号をごまかせれば当たりくじということにして当選金をもらえるかもしれない」と思いつき、自分の持っている宝くじの番号部分を当選番号に書き換え、X銀行へ持っていくと当選金への換金を要求しました。
しかし、受け付けた銀行員が宝くじの番号部分が通常の宝くじと異なっていることに気づき、滋賀県彦根警察署に通報。
駆け付けた警察官により、Aさんは有価証券偽造等・同行使罪と詐欺未遂罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・牽連犯
ここで、前回までの記事で取り上げていた有価証券偽造罪もしくは有価証券変造罪、ここまで見てきた偽造有価証券行使罪もしくは変造有価証券行使罪、詐欺未遂罪の関係について考えてみましょう。
Aさんは、先述したように外れの宝くじを当たりくじのように改ざんし、当たりくじであると思わせることで当選金を受け取ろうと考えていました。
ですから、有価証券偽造罪もしくは有価証券変造罪にあたる行為=外れの宝くじを当たりくじのように改ざんする行為は、偽造有価証券行使罪もしくは変造有価証券行使罪にあたる行為=改ざんした宝くじを銀行に当選金との交換で引き渡すために使用するための行為であるといえます。
さらに、偽造有価証券行使罪もしくは変造有価証券行使罪にあたる行為は、詐欺未遂罪にあたる行為=銀行に当たりくじだと偽って当選金をだまし取ろうとする行為のための行為であるといえます。
つまり、Aさんの事例では、有価証券偽造罪もしくは有価証券変造罪は、偽造有価証券行使罪もしくは変造有価証券行使罪を犯すための手段であり、偽造有価証券行使罪もしくは変造有価証券行使罪は詐欺未遂罪を犯すための手段であるといえるのです。
このように、複数の犯罪にあたる行為をしたとき、それぞれが手段と目的の関係に立っていることがあります。
こうした場合、「牽連犯」という考え方によって下される刑罰の重さが決まります。
牽連犯については、刑法54条後段に規定があります。
刑法54条
一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
今回のAさんの事例で考えると、それぞれの犯罪の法定刑は以下のようになります。
有価証券偽造罪もしくは有価証券変造罪:3月以上10年以下の懲役
偽造有価証券行使罪もしくは変造有価行使罪:3月以上10年以下の懲役
詐欺未遂罪:10年以下の懲役
これらを比較すると、「3月以上10年以下の懲役」が最も重い刑罰となるため、Aさんがこれらの犯罪で有罪となった場合には、この範囲で刑罰が決められるということになるでしょう。
宝くじ改ざんによる刑事事件では、このように複数の犯罪の絡む事態となりかねません。
複数の犯罪が成立する場合、それらがどのような関係にあるのか、どういった事情で起こったものなのか等を検討しなければ、見通しを立てたり対策したりすることも難しくなってしまいます。
その検討を一般の方だけで行うのは困難だと思いますので、複数の犯罪が成立する刑事事件に関わってしまった時にはすぐに弁護士に相談し、見通しを聞いてみることをおすすめいたします。
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