盗撮事件で任意出頭・自首①滋賀県迷惑防止条例違反
盗撮事件と任意出頭・自首、滋賀県迷惑防止条例違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、滋賀県草津市にあるXという会社で勤務する会社員です。
Aさんは、女性の下着姿に興味を持ち、会社の女子トイレに忍び込むと、女子トイレの中に盗撮用の小型カメラを設置し、女子トイレの利用者の下着姿を盗撮していました。
しかしある日、女子トイレの利用者の1人がしかけられた小型カメラに気づき、滋賀県草津警察署に通報したことをきっかけに捜査が開始され、会社内で盗撮事件が起こったことが知れ渡りました。
Aさんは、自分が盗撮をしていたことがばれて滋賀県草津警察署に逮捕されてしまうのではないかと不安になり、まずは刑事事件に強い弁護士に、自ら出頭した方がよいのかどうか、自分の盗撮行為はどういった罪にあたるのかといったことを含めて今後の対応を相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・トイレでの盗撮と滋賀県迷惑防止条例違反
盗撮事件の場合、成立しうる犯罪が盗撮の行われた事件地がどの都道府県なのか、どういった態様で盗撮行為をしたのか、盗撮の被害者の年齢は何歳なのか、といった様々な事情によって成立する犯罪が異なります。
「盗撮」という言葉は広く知られており、どういった内容の犯罪なのかはなんとなく皆さんご存知でしょうが、どのような場合に何罪になるかは意外にも複雑なのです。
今回のAさんは、滋賀県草津市にある自分の勤務する会社の女子トイレで盗撮を行っていたようです。
このような場合、どういった犯罪が成立するのか、まずはそこを考えていきましょう。
まず成立が考えられるのは、滋賀県の迷惑防止条例違反(正式には「滋賀県迷惑行為等防止条例違反」)です。
各都道府県では、都道府県民に対する迷惑行為を防止するため、それぞれ迷惑防止条例を定めています。
この迷惑防止条例違反は、盗撮事件だけでなく痴漢事件でも目にすることの多い犯罪ですから、聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
各都道府県の迷惑防止条例では、盗撮行為に関する規定がありますが、具体的に規制している行為や刑罰の重さは都道府県によってまちまちであるため、とある県では迷惑防止条例違反の盗撮行為であると判断される行為も、別の件では迷惑防止条例違反とはならない場合があります。
だからこそ注意が必要なのですが、今回はAさんの例に沿って考えてみましょう。
まずは滋賀県迷惑防止条例の盗撮に関する条文を確認してみましょう。
滋賀県迷惑防止条例3条
1項 何人も、公共の場所または公共の乗物において、みだりに人を著しく羞恥させ、または人に不安もしくは嫌悪を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
2号 人の下着または身体(これらのうち衣服等で覆われている部分に限る。以下「下着等」という。)をのぞき見すること。
3号 前2号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
2項 何人も、公共の場所、公共の乗物または集会所、事務所、学校その他の特定多数の者が集まり、もしくは利用する場所にいる人の下着等を見、またはその映像を記録する目的で、みだりに写真機、ビデオカメラその他撮影する機能を有する機器(以下「写真機等」という。)を人に向け、または設置してはならない。
3項 何人も、公衆または特定多数の者が利用することができる浴場、便所、更衣室その他の人が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいる場所において、当該状態にある人の姿態を見、またはその映像を記録する目的で、みだりに写真機等を人に向け、または設置してはならない。
どの都道府県でも、滋賀県迷惑防止条例3条1項にあるような「公共の場所」「公共の乗り物」での盗撮行為は規制されていることが多いです。
しかし、滋賀県迷惑防止条例3条2項や3条3項にあるような、「公共の場所」「公共の乗り物」以外の場所で「特定多数の者」が利用する場所での盗撮行為についての規定については、規定のある県とない県が存在します。
滋賀県の場合はご覧いただいて分かるように、「特定多数の者」が利用する場所での盗撮行為は滋賀県迷惑防止条例で禁止されています。
今回のAさんは、会社内の女子トイレで盗撮をしています。
会社内の女子トイレは、その会社に勤務している人が利用する場所ですから、不特定多数の者が利用する場所=「公共の場所」とは言えませんが、「その会社に勤務している」という特定の人たち=「特定多数の者」が利用する場所だといえそうです。
そうした場所のトイレ=「人が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいる場所」で、トイレを利用する人達の姿を盗撮していたのですから、「当該状態にある人の姿態を見、またはその映像を記録する目的で、みだりに写真機等を人に向け、または設置」したといえるでしょう。
つまり、今回のAさんのケースでは、Aさんの盗撮行為は滋賀県迷惑防止条例違反となることが考えられるのです。
これがもし、例えば盗撮現場が個人宅のトイレであったような場合には、個人宅のトイレは「特定多数の者」ではありませんから、迷惑防止条例違反にはならないということになります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、盗撮事件のご相談も多くいただいています。
滋賀県の盗撮事件にお困りの際は、弊所弁護士までご相談ください。
次回の記事では、Aさんに成立が考えられる他の犯罪について検討します。