カスハラで刑事事件②~恐喝罪
~前回からの流れ~
滋賀県高島市に住んでいるAさんは、近所にあるコンビニ店を利用した際、店員Vさんの接客態度に苛立ち、Vさんに対して抗議をしました。
しかし、Vさんが真摯に受け止めていないように感じたAさんは激高し、
①「謝るなら土下座をするのが普通だろう。土下座して謝れ。さもないとSNSにここの店員Vは悪質だと拡散する」と怒鳴りつけ、Vさんに土下座をさせました。
②Vさんのそばにあった棚をたたきながら、「サービスが悪すぎることに対して慰謝料を払え。商品代をただにしろ」などと怒鳴りました。
他の利用客が滋賀県高島警察署に通報したことによって警察官が駆け付け、Aさんは逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
前回の記事では、サービス業などの従業員に対して顧客が迷惑行為を行うことが、カスタマーハラスメント、略して「カスハラ」と呼ばれ始めていること、カスハラであっても態様によっては刑事事件になること、今回の事例のAさんが①の行動を取ったとすると刑法に規定のある強要罪になりうることを取り上げました。
今回の記事では、まず、Aさんが②の行動を取った場合にどういった犯罪に問われうるのか触れていきます。
・Aさんに成立する犯罪は?~②の場合
今回の事例のAさんがしてしまったカスハラ行為について、Aさんが②の行動を取った際に成立しうる犯罪として何が考えられるのでしょうか。
②の行動をAさんが取ってしまった場合、成立が考えられる犯罪としては、恐喝未遂罪が挙げられます。
刑法249条(恐喝罪)
1項 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
条文で見ると、恐喝罪は非常にシンプルな規定となっていますが、これに当てはまるかどうかは、事件ごとの事情を詳しく考慮していかなければなりません。
例えば、恐喝罪の「恐喝して」とは、相手の反抗を押さえつけない程度の暴行又は脅迫を用いて、相手を畏怖させ、財物の交付(又は違法に利益を得ること)を要求することを指します。
この「恐喝」行為をして、相手から財物を引き渡させる、または不法の利益を得させることで恐喝罪が成立するのです。
Aさんの②のカスハラ行為を考えてみましょう。
Aさんは、Vさんのそばの棚をたたきながら怒鳴り、商品代をただにするよう要求しています。
まず、恐喝罪の「恐喝」をする際に用いられる暴行は、人の体に直接的にふるわれる暴力でなくともよいとされています。
今回のAさんの、Vさんのそばの棚をたたくという行為も、恐喝行為における「暴行」と認められる可能性があります。
さらに、Aさんは商品代をただにすることを要求しています。
商品代を払わないということはその分利益を得ているということができます。
それを暴行を用いて要求しているわけですから、Aさんは恐喝行為をしていると考えることができるのです。
しかし、事例を見るとAさんは商品代をただにしてもらう前に逮捕されているようですから、利益を得るまでは至らなかった=恐喝罪を遂げるに至らなかったということで、恐喝未遂罪が成立すると考えられるのです。
・弁護活動
前回の記事でとりあげた①の行為でも、今回の記事でとりあげた②の行為でも、被害者の方が存在することから、弁護士の活動としてはまず示談交渉にとりかかることが予想されます。
①②のようなカスハラ行為以外のカスハラ行為で刑事事件化した場合でも、被害者が存在する犯罪であることが多いでしょうから、カスハラに関連した刑事事件の多くではまず示談交渉に着手してもらうことが考えられます。
カスハラに関連した刑事事件では、被害者の方はカスハラ行為によって不快な感情を抱いたり、恐怖を感じたりしていることでしょう。
そうしたことから、直接の連絡は避け、弁護士を挟んでの謝罪・交渉をすることが望ましいと考えられます。
また、カスハラに関連した刑事事件では、被疑者自身が被害者の方の勤務先の店舗等を知っていることもあり、態様によってはAさんのように逮捕されてしまうことも考えられます。
そうした場合には、逮捕・勾留からの釈放を求める活動を行うことも重要となってくるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を専門的に取り扱っています。
0120-631-881では、弊所弁護士のサービスについてお問い合わせを受け付けています。
初回無料法律相談や初回接見サービスでは、カスハラに関する刑事事件やその弁護活動について、弁護士が直接ご相談させていただきますので、まずはお気軽にお問い合わせください。