夜中の現行犯逮捕(公務執行妨害罪)①
大学生のAさんは、友人らとともに滋賀県甲賀市の居酒屋で飲み会をしており、そこで非常に盛り上がっていました。
Aさんらは興奮冷めやらず、居酒屋を出ても大声で騒ぐなどしていました。
そこへ、交通整理をしていた滋賀県甲賀警察署の警察官がやって来て、「夜中なので静かに」「こちらは車道になるのでもっと端によけてください」と声をかけてきました。
Aさんは酔っていて気が大きくなっていたこともあり、「邪魔するな」等と言いながら、警察官につかみかかったり帽子を奪って投げ捨てたりしました。
その結果、Aさんは、公務執行妨害罪の容疑で現行犯逮捕されてしまいました。
Aさんが逮捕されたことを滋賀県甲賀警察署からの連絡で知ったAさんの両親でしたが、Aさんの両親は滋賀県甲賀市から離れたところに住んでおり、すぐにAさんのもとに向かうことはできません。
そこでまずは弁護士を手配しようと考えたAさんの両親でしたが、Aさんの逮捕は夜中であったために、弁護士を手配しようとしてもどこにもつながらず、Aさんの両親は困り果ててしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・公務執行妨害罪
飲み会などでお酒も入り、気分が盛り上がってしまうことは誰にでもあることでしょう。
しかし、そうした気分の高揚から普段はしないような行動に出てしまい、刑事事件を起こして逮捕されてしまった、というトラブルも多く見られます。
上記事例でAさんが容疑をかけられている公務執行妨害罪とは、刑法95条1項に規定されている犯罪です。
刑法95条1項
公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
Aさんの事例を見てみると、Aさんは交通整理中の警察官にからんでいます。
警察官はもちろん「公務員」ですから、公務執行妨害罪の客体となります。
その「公務員」が「職務を執行するに当た」って「公務員」に「暴行又は脅迫」をしたら公務執行妨害罪が成立することになります。
今回の警察官は交通整理中でしたから、警察官の「職務」の最中であったといえるでしょう。
そして、公務執行妨害罪の「職務」は適法であることが求められますが、事例を見る限り、警察官が違法なことをしていたとは考えにくいです。
さらに、Aさんはその警察官につかみかかるなどの行為をしていますから、「暴行」をしたとも言えそうです。
こうしたことから、Aさんには公務執行妨害罪が成立すると考えられるのです。
・公務執行妨害罪と示談
こうした公務執行妨害事件でよくご相談いただく内容の1つに、「相手の警察官と示談できませんか」というものがあります。
しかし、公務執行妨害罪が保護しているのは公務員個人ではなく、公務員によって執行される公務そのものです。
つまり、今回の例でいえば、警察官その人ではなく、警察官の行う仕事を妨害したから公務執行妨害罪となっているのです。
そのため、公務執行妨害罪の被疑者は公務員(今回の例では警察官)個人ではなく、公務を妨害された国や地方公共団体となるのです。
国や地方公共団体に示談を求めてもその締結は難しく、交渉すら拒否されることが多いです。
ですから、公務執行妨害事件では示談が困難である、示談ができないとされるのです。
ですが、相手の公務員に謝罪の手紙を書く、反省文を書く、贖罪寄附を行う、ボランティア活動をする等、反省の気持ちを表していくことは大切です。
また、相手の公務員が怪我などをしている場合、公務執行妨害罪だけでなく傷害罪も成立していることが考えられますから、その範囲で謝罪や賠償をしていくことも考えられます。
どういった活動が考えられるのかは、弁護士に詳しい事情を含めて相談し、聞いてみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、公務執行妨害事件のご相談・ご依頼も多くいただいています。
公務執行妨害罪で逮捕・取調べを受けた方、そのご家族の方は、遠慮なく弊所弁護士までご相談ください。
次回は、公務執行妨害罪で逮捕された場合について詳しく触れていきます。