中学生をキャバクラで雇用②風営法違反
~前回からの流れ~
Aさんは、滋賀県高島市でキャバクラを経営していました。
ある日、Aさんはキャバクラですでに働いていたBさんという女性からCさんという女性を紹介され、いわゆるキャバ嬢として雇いましたが、Cさんはまだ14歳の中学生でした。
さらに、すでにキャバクラでキャバ嬢として雇っていたBさんも、15歳の中学生でした。
Aさんはそのことを知っていましたが、BさんやCさん自身が働きたいと言っているのだし、BさんやCさんがお酒を飲まなければ問題ないだろうと考えてBさんやCさんをキャバ嬢として働かせていました。
するとある日、滋賀県高島警察署の警察官がAさんのキャバクラを訪れ、Aさんは児童福祉法違反や風営法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和元年9月26日福井新聞ONLINE配信記事を基にしたフィクションです。)
・中学生をキャバクラで雇用したら風営法違反にも?
前回の記事では、満15歳未満であるCさんをキャバ嬢として酒席に侍らす行為をしたAさんは児童福祉法違反になると考えられるということを取り上げました。
今回の記事では、Aさんのもう1つの逮捕容疑である風営法違反について考えてみましょう。
風営法は、正式名称を「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」という法律で、風俗営業の規制を行い、風俗営業の健全化を図る法律です。
この記事の中では風営法と呼びますが、風適法と略して呼ばれる場合もあります。
風営法における「風俗営業」をする際には、この風営法の中にある決まりを守らなければいけません。
風営法にいう「風俗営業」には、「キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」(風営法2条1項1号)が含まれているため、Aさんの経営していたようなキャバクラは「風俗営業」であり、風営法に則って営業させなければならないと考えられます。
そして、この風営法の中には、以下のような規定があります。
風営法22条1項
風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
3号 営業所で、18歳未満の者に客の接待をさせること。
ここで「接待」とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」(風営法2条3項)とされています。
こうした定義からすれば、一般にキャバクラでキャバ嬢が客について接客することは、この風営法の「接待」に含まれると考えられます。
ですから、中学生をキャバクラでキャバ嬢として働かせることは、風営法のこの部分に違反することになるのです。
こういった年少者雇用による風営法違反となってしまった場合、「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」という法定刑が定められており、この範囲で処罰されることになります(風営法50条1項4号)。
また、仮に風営法の「接待」をしていなかったとしても、風営法では以下のような決まりもあるため、注意が必要です。
風営法22条1項
風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
4号 営業所で午後10時から翌日の午前6時までの時間において18歳未満の者を客に接する業務に従事させること。
つまり、この禁止されている時間帯に18歳未満の者に「接待」でなくとも客に接する業務に従事させていれば、こちらも未成年者雇用による風営法違反となるのです。
こちらの風営法違反についても先ほど挙げた「接待」についての風営法違反と同様、「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」するという法定刑が定められています。
なお、前回の記事で取り上げた児童福祉法にもあったように、風営法にも年齢不知によって処罰を免れることができないという規定があることにも注意が必要です。
風営法50条2項
第22条第1項第3号若しくは第4号(第31条の23及び第32条第3項において準用する場合を含む。)、第28条第12項第3号、第31条の3第3項第1号、第31条の13第2項第3号若しくは第4号又は第31条の18第2項第1号に掲げる行為をした者は、当該18歳未満の者の年齢を知らないことを理由として、前項の規定による処罰を免れることができない。
ただし、過失のないときは、この限りでない。
前回から見てきたように、中学生をキャバクラでキャバ嬢として雇うことは、児童福祉法違反や風営法違反といった犯罪になります。
これは、中学生本人がキャバ嬢として働くことを了承していることや、中学生本人が飲酒しないことといった事情は関係なく成立します。
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