SNSを通じた不正アクセス禁止法違反事件
SNSを通じた不正アクセス禁止法違反事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
〜事例〜
Aさんは、自身のTwitterアカウントを作成すると、「私をフォローして、このツイートをリツイートしてくれた方の中から抽選で30人に10万円ずつ配ります」といったツイートを行いました。
そして、フォロー・リツイートをして応募してきた滋賀県甲賀市に住むVさんに対し、ダイレクトメッセージを通じて連絡を取りました。
Aさんは、「あなたは当選しました。おめでとうございます。形式上、X金融会社からの融資という形を取るため、氏名と住所、銀行口座、ID、パスワードを教えてください」と伝え、VさんはAさんの指示通りに情報を伝えました。
しかしAさんは、Vさんへ10万円を渡すつもりはなく、Vさんから伝えられた情報を用いてVさんのさまざまなアカウントにアクセスし、ネットショッピングや預金の引き出しなどを行いました。
10万円の振り込みもなく、見覚えのない明細や通知が届いたことで不正アクセスされたことに気がついたVさんは滋賀県甲賀警察署に被害を届け出ました。
そして捜査の結果、Aさんは不正アクセス禁止法違反の容疑で逮捕されることとなりました。
(※令和3年2月3日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・SNSを通じた不正アクセス禁止法違反事件
この記事をご覧の方の中にも、TwitterなどのSNSでアカウントを作り活用しているという方は多いでしょう。
そしてそのSNS上では、今回のAさんのように、「●●を抽選でプレゼントします」といった懸賞をしている人もいます。
もちろん、企業やインフルエンサーなどが広報活動の一環として行うなど、言葉通りに行われているものもありますが、今回のAさんのように、賞品や賞金を渡すつもりはないのに懸賞をしているように見せかけ、個人情報を騙し取ってしまうという手口も見られます。
今回のAさんは、Vさんから氏名や住所、銀行口座やアカウントのID、パスワードといった情報をもらい、それを利用してVさんのアカウントにアクセスしたようです。
この行為は不正アクセス行為となり、不正アクセス禁止法違反となります。
不正アクセス禁止法とは、正式名称を「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」という法律で、名前の通り不正アクセス行為を禁止しています。
不正アクセス禁止法第3条
何人も、不正アクセス行為をしてはならない。
不正アクセス禁止法第11条
第3条の規定に違反した者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
不正アクセス行為を大まかに説明すると、インターネット等を通じて他人のパスワード等を入力し、本来本人でなければ使えないような機能を使えるようにすることを指します。
つまり、本人の同意なく勝手に他人のアカウントにログインするといった行為は不正アクセス禁止法のいう不正アクセス行為となるのです。
今回のAさんは、Vさんのアカウントに許可なく勝手にログインしていることから、不正アクセス行為をしたことによる不正アクセス禁止法違反となると考えられるのです。
ここで注意しなければならないのは、不正アクセス禁止法では、不正アクセス行為自体だけでなく、不正アクセス行為のための準備行為や、不正アクセス行為を助長する行為なども禁止しているということです。
例えば、不正アクセス行為をするために他人のIDやパスワードを不正に取得する行為も禁止され刑罰が定められているため(不正アクセス禁止法第4条、第12条第1号)、不正アクセス行為に至らない段階でも不正アクセス禁止法違反となる可能性があるのです。
今回のAさんは、Vさんのアカウントに不正アクセスをしたことで不正アクセス禁止法違反の容疑をかけられ逮捕されていますが、Vさんのアカウントでネットショッピングをしたり預金の引き出しをしたりしていることから、不正アクセス禁止法違反だけでなく、詐欺罪や電子計算機使用詐欺罪といった別罪も成立することが考えられます。
そうなると、再逮捕が繰り返されるなど複雑な刑事手続きを辿る可能性も出てきますから、刑事事件に強い弁護士のサポートを受けながら対応していくことが望ましいでしょう。
刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、SNSを通じた不正アクセス禁止法違反事件にも対応しています。
不正アクセス禁止法違反事件では、不正アクセス後の行為によって別の犯罪が成立するケースも少なくありませんから、刑事事件に詳しい弁護士にそれぞれの犯罪やその見通しについて詳しくアドバイスをもらいましょう。
まずはお気軽にご相談ください。