ペットの横領・窃盗事件③

ペットの横領・窃盗事件③

ペット横領窃盗事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

滋賀県甲賀市にあるペットホテルでアルバイトをしているAさんは、ある日、滋賀県甲賀市在住のVさんから預かったペットの犬を世話していました。
するとAさんは、Vさんのペットの犬が珍しい犬種であることに気づき、どうしても自分で飼いたくなってしまいました。
そこでAさんは、Vさんのペットの犬を自宅に連れ帰ってそこで自分のペットとして世話をしはじめると、Vさんには「犬の調子が悪いようなので病院に預ける」などと嘘を言ってペットの犬を引き渡しませんでした。
Vさんが不審に思って滋賀県甲賀警察署に相談し、滋賀県甲賀警察署が捜査を開始したところ、AさんがVさんのペットの犬を自分のペットとして飼っていることが発覚。
Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・業務上横領罪と窃盗罪

今回取り上げた事例も、前回の記事で取り上げた事例同様、ペットホテルで起きたペットに関する刑事事件のようです。
しかし、今回のAさんは窃盗罪の容疑で逮捕されており、前回の事例で逮捕容疑であった業務上横領罪とはまた別のようです。
2つの事例は同じ内容のように見えますが、どうして逮捕罪名が異なるのでしょうか。
まずは業務上横領罪窃盗罪、2つの犯罪を確認してみましょう。

刑法253条(業務上横領罪)
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。

刑法235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

前回・前々回と取り上げた通り、横領罪業務上横領罪が成立するためには、「(業務上)自己の占有する他人の物を横領」していると認められる必要があります。
つまり、「委託信任関係に基づいて自分の支配下にある他人の物」について「他人の物の占有者が委託の任務に背いてその物につき権限がないのに、所有者でなければできないような処分をする意思を実現する行為」をしていなければ、横領罪業務上横領罪は成立するとは言えないのです。

一方、窃盗罪が成立するには、「他人の財物を窃取」したと認められる必要があります。
窃盗罪での「他人の財物」とは、他人が管理・支配している財物を指します。
この「財物」とは有体物を指すといわれており、動物も含まれます。
そして、窃盗罪のいう「窃取」とは、その物を占有=管理・支配している人の意思に反してその物を自分の占有下=管理・支配下におくことを指します。

すなわち、大まかに言えば、横領罪業務上横領罪が「自分が支配・管理している他人の物をその人の意思に反して自分の物にしてしまう」犯罪であるのに対して、窃盗罪は「他人が管理・支配している他人の物をその人の意思に反して自分の物にしてしまう」という犯罪なのです。
ですから、横領罪業務上横領罪窃盗罪のどちらが成立するかを分けるポイントとしては、客体=自分の物にしてしまった他人の物について、他人が管理・支配していた物なのか、自分が管理・支配していた物なのか、という点が挙げられるのです。

ここで今回のAさんについて考えてみましょう。
Vさんのペットの犬はAさんの働くペットホテルに預けられただけですから、Vさんの物であることに間違いはありません。
そして、Vさんはペットの犬を預けただけですから、当然Aさんにペットの犬を譲るつもりはなく、AさんがVさんのペットの犬を連れ帰り自分のペットとしたことは、Vさんの意思に反することであり、さらにAさんがそのペットの犬の所有者のようにふるまう行為でもあります。

では、Vさんのペットの犬の管理・支配しているのはAさんだったのでしょうか。
今回の事例を見ると、Aさんはペットホテルのアルバイト従業員のようです。
もちろんそのペットホテルでAさんが実際にどれほどの立場にあったかにもよりますが、通常、店やその商品、預かっている物についての管理権限はペットホテルの経営者や責任者が持っているものであり、一介のアルバイト従業員が預かっているペットの管理権限を持っているとは考えづらいでしょう。
そうであれば、AさんはVさんのペットの犬の管理・支配はしていないということになり、他人の占有下にある他人の財物を占有者の意思に反して自分の占有下においた=「他人の財物を窃取」したということになります。
こうしたことから、Aさんには窃盗罪が成立するものと考えられます。

ただし、実際にAさんがVさんのペットの犬を管理・支配している立場にあった等の事情があれば、窃盗罪ではなく、前回の記事で取り上げた業務上横領罪となる可能性も出てきます。
どういった事情が業務上横領罪となりうるのか等は、専門知識や過去の事例と実際の事情を突き合わせてみなければ分かりません。
弁護士に早期に相談し、見通しを立ててもらうことをお勧めいたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、業務上横領事件窃盗事件のご相談ももちろん受け付けています。
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