業務妨害罪の種類とは
業務妨害罪の種類について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、滋賀県草津市にある飲食店で、店員の態度に腹を立て、その飲食店に迷惑をかけてやろうと考えるようになりました。
そこでAさんは、飲食店に電話をかけると、「飲食店に爆弾を仕掛けた」と嘘をつきました。
電話を受けた飲食店は滋賀県草津警察署に通報。
その後の滋賀県草津警察署の捜査により、Aさんは威力業務妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、Aさんが逮捕されたと知り、急いで刑事事件を扱っている弁護士に相談することにしました。
Aさんの家族は、相談の場でAさんの逮捕容疑である業務妨害罪について詳しく説明を聞くことになりました。
(※この事例はフィクションです。)
・偽計業務妨害罪と威力業務妨害罪
今回の事例のAさんが「威力業務妨害罪」という犯罪の容疑で逮捕されているように、一般に「業務妨害(罪)」という言葉は周知されているものの、実は刑法で定められている業務妨害に関わる犯罪の罪名は、その業務妨害行為の態様などによって細かく分けられています。
今回の事例のAさんの逮捕容疑は威力業務妨害罪という犯罪であり、刑法第234条に定められています。
刑法第234条(威力業務妨害罪)
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
この条文にいう「前条」とは、信用毀損罪および偽計業務妨害罪を規定する刑法第233条を指します。
刑法第233条(偽計業務妨害罪等)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又は業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
条文のとおり、偽計業務妨害罪と威力業務妨害罪は共に「業務を妨害」することで成立する犯罪ですが、その業務を妨害する手段として「偽計」が用いられたか、それとも「威力」が用いられたかによってどちらが成立するのかが変わることになります。
偽計業務妨害罪と威力業務妨害罪の条文中にある「業務」とは、どちらも人が社会生活上の地位に基づき継続して従事する事務または事業をいいます。
例えば、今回の事例の現場となった飲食店の事業は「業務」であるといえるでしょう。
今回の事例では、Aさんは爆弾を仕掛けたと嘘の電話をしていますが、これによって飲食店は警察への通報や客の避難誘導、営業の停止などを行い業務が正常にできなくなった、またはできなくなるおそれが相当程度あったと考えられます。
こうしたことから、Aさんの行為は「業務を妨害」していたと考えられます。
・「爆弾を仕掛けた」という嘘は「偽計」?「威力」?
では、Aさんが爆弾を仕掛けたという嘘を飲食店に電話をしたという業務妨害行為の手段が「偽計」なのか「威力」なのか、どちらになるのでしょうか。
ここで、威力業務妨害罪の「威力」とは、人の意思を制圧するに足りる勢力をいうものとされています。
つまり、自由な意思で判断したり行動することに対して圧力をかけ、その自由を奪うような行為が威力業務妨害罪の「威力」に当たるというわけです。
他方で、偽計業務妨害罪の「偽計」とは、人を欺罔、誘惑し、あるいは人の錯誤や不知を利用する違法な手段を指します。
つまり、相手を騙すなどすることでその判断や行動の自由を奪うことが「偽計」となるのです。
今回の事例では、Aさんの電話した内容が嘘であることから、一見「偽計」を手段とした偽計業務妨害罪が成立するように思えますが、こうしたケースでは、嘘であっても爆弾という相手が抗えない強力な勢力を用いていることから「威力」を用いていると判断され、威力業務妨害罪が成立することが多いようです。
偽計業務妨害罪と威力業務妨害罪は法定刑こそ同じですが、罪名が何であるかというのは刑事手続や司法判断においてはかなり重要な違いをもたらします。
だからこそ、どの行為がどの条文のどこに当てはまってどういった犯罪の容疑がかけられているのかということを、刑事事件に強い弁護士にきちんと相談しておくことが大切です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、偽計業務妨害事件や威力業務妨害事件といった業務妨害行為に関わる刑事事件のご相談・ご依頼も受け付けています。
特に、今回のAさんの事例のように、被疑者が逮捕されてしまっているケースでは、限られた時間の中で迅速な弁護活動が求められます。
まずはお早めにご相談ください。