少年事件の試験観察とは?
少年事件の試験観察とはどういったものなのかということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
滋賀県東近江市に住んでいる高校1年生のAさんは、学校から自宅へ帰る道中に、別の高校に通う生徒と口論の末に喧嘩となり、相手の生徒を殴って骨折などの大けがを負わせてしまいました。
喧嘩を目撃していた通行人が滋賀県東近江警察署に通報したことで警察官が現場に駆け付け、Aさんは傷害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、たびたびこうした暴行・傷害事件を起こしており、中学生の時にも逮捕され、保護観察処分となった経緯がありました。
そういった経緯から、今回は少年院送致となるかもしれないと聞いたAさんの両親は、少年事件に対応している弁護士に相談。
そこでAさんの両親は、少年事件には試験観察という制度があると聞き、弁護士に試験観察について詳しく聞いてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・少年事件の終局処分
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、少年事件の手続や処分には、成人の刑事事件と異なるものが多くあります。
未成年の者は可塑性が高い=矯正教育などをすることで更生できる可能性が高いとされているため、少年事件では少年の更生を重視した手続・処分が取られることとなっているのです。
少年事件では、基本的には家庭裁判所での調査を経た上で家庭裁判所で開かれる審判を受けることになります。
少年事件では全件送致主義という主義に基づいて、警察などの捜査機関での捜査が終わった事件については、基本的にすべての事件が家庭裁判所へ送られるためです。
こうして少年事件の専門家の調査を受け、審判によって処分が決められるのです。
家庭裁判所の審判で下される処分は、成人の刑事事件で処される刑罰とは異なり、あくまで少年の更生のための処分(保護処分)という扱いです。
ですから、例えば少年院送致のように、特定の施設に収容されるような処分であっても、その非行をしたことによる罰というわけではありません。
少年院送致も少年の更生のために行われる処分であり、少年院内では矯正教育やその後の自立のための職業訓練などが行われています。
・試験観察とは?
しかし、少年院送致が少年のための処分であったとしても、少年院に入っている間は社会から切り離されて生活することになります。
通っていた学校に通えなくなってしまったり、働いていた会社で働けなくなってしまったりというデメリットがあることもまた事実です。
一度社会から離れてしまうことによるデメリットを避けるために、少年院送致を回避したい、社会内で更生を目指したいと考える方ももちろんいらっしゃいます。
こうした少年事件においては、試験観察を目指すという付添人活動をおこなう場合があります。
試験観察とは、文字通り、試験的に観察する期間を設ける処分を指します。
試験観察は、審判の場で少年の処分をどういったものにするのかすぐに決められない場合に取られます。
試験観察となった場合、決められた期間を家庭裁判所の観察のもと過ごし、その期間中の少年の生活態度や様子などによって最終的な処分が決められることになります。
この試験観察期間は、少年の自宅で過ごす場合もあれば、民間の協力者や専門施設に指導を委ねてその指定された場所で過ごす場合(補導委託)もあります。
今回のAさんの事例では、Aさんは以前にも同じような傷害事件を起こして家庭裁判所から保護処分を受けているにも関わらず、Aさんは同様の少年事件を起こしているという状況です。
社会内での更生を目指す保護観察処分を経てもまた同じことを繰り返してしまっていますから、前回同様の処分だけでは公正に不十分と考えられ、少年院で矯正教育を受けながらの生活が必要と判断される可能性も十分あると考えられます。
ですから、まずは前回よりもより具体的な手段を示して、社会内での更生が可能であることや、そのためにAさん本人やその周囲の家族が具体的に行動し続けられることを示していく必要があると考えられます。
そのために、弁護士と共にAさんやその家族で更生のための環境づくりを行うと共に、その成果を家庭裁判所に示して判断をしてもらえるよう試験観察を目指していく活動が有効であると考えられるのです。
ただし、試験観察はあくまでその期間中試験的に少年やその周囲を観察し、その様子によって最終的な処分を決めるものです。
試験観察を目指すことを最終目的としてしまうのではなく、さらにその先も見据えながら、更生できる環境を整えることが重要です。
そのためには、少年事件の専門知識がある弁護士のサポートを受けることが効果的です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、成人の刑事事件だけでなく少年事件の取り扱いも行っております。
滋賀県の少年事件にお困りの際は、お気軽にご相談ください。