(事例紹介)人身事故後のひき逃げで逮捕された事例

(事例紹介)人身事故後のひき逃げで逮捕された事例

~事例~

滋賀県警草津署は25日、自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、滋賀県守山市に住むフィリピン国籍の飲食店経営の女(28)を逮捕した。

 逮捕容疑は、同日午前1時41分ごろ、滋賀県栗東市で軽乗用車を運転し、左折するため減速した甲賀市の男性(48)のオートバイに追突、首にけがを負わせてそのまま逃げた疑い。
(※2022年5月26日20:30京都新聞配信記事より引用)

~ひき逃げとその刑罰~

今回取り上げた事例では、ひき逃げをしたとして女性が検挙されていますが、ひき逃げとは、人身事故を起こした後、道路交通法に定められている義務を果たさずにそのまま事故現場から離れることを指します。
道路交通法では、人身事故を起こしてしまった場合、負傷者を救護する義務(いわゆる「救護義務」)や、警察署などに通報し事故を報告する義務(いわゆる「報告義務」)、道路上の危険を防止する措置をする義務(いわゆる「危険防止措置」)を定めています。
ひき逃げは、これらの義務に反するため、道路交通法違反という犯罪になるのです(「ひき逃げ」という罪名ではありません。)。

そして、ひき逃げ事件の場合、道路交通法の義務を果たさずにその場を離れたというひき逃げ行為以外にも、人身事故を起こしたこと自体についても罪が成立します。
この時成立する罪は、人身事故がどのように起きたか、例えば、わき見運転などの不注意による人身事故なのか、赤信号を殊更に無視するなどの危険運転行為による人身事故なのかといった事情によって異なります。
不注意=過失によって起こった人身事故であれば、今回取り上げた事例同様、自動車運転処罰法に定められている過失運転致傷罪となるでしょう。

さらに、無免許運転や飲酒運転といった事情があれば、それに対しても犯罪が成立することになります。

つまり、ひき逃げ事件では、人身事故を起こしたこと自体に成立する罪+義務を果たさなかったこと(ひき逃げ行為)による道路交通法違反の少なくとも2つの犯罪が成立し、無免許運転や飲酒運転の事情があれば加えてその犯罪も成立するという形になるのです。
今回取り上げた事例でも、検挙された女性には、人身事故を起こしたこと自体に対する過失運転致傷罪と、ひき逃げ行為をしたことに対する道路交通法違反の2つの犯罪の容疑がかけられていることが分かります。

人身事故に加えてひき逃げによる犯罪が成立することで、単純に犯罪の数が増えていることや、義務を果たさずにその場から離れるという悪質性の高い行為をしていることから、ひき逃げ事件では単純な人身事故事件よりも起訴され正式な刑事裁判を受ける可能性や厳しい処分を受ける可能性が高いと考えられます。

例えば、過去には以下のような裁判例があります。
・普通貨物自動車の運転中、横断歩道上の歩行者に気が付かず衝突し、加療約11日の怪我を負わせた人身事故を起こし、警察への報告義務を果たさなかったというひき逃げ事件で、被害者との示談が成立し懲役10月執行猶予3年となった事例(判決:平成26年5月)
・普通乗用車の運転中、一時停止標識を無視して一時停止をせず、普通乗用車と衝突し、同乗者に加療約22日間の怪我を負わせた人身事故を起こし、警察への報告義務を果たさなかったというひき逃げ事件で、懲役1年執行猶予4年が言い渡された事例(判決:平成26年8月)
・普通乗用自動車の運転中、前方左右の安全確認を怠り、被害者と衝突し、加療約94日の怪我を負わせた人身事故を起こし、警察への報告義務を果たさなかったというひき逃げ事件で、懲役1年6月執行猶予3年が言い渡された事例(判決:平成25年4月)
(参照:第一東京弁護士会刑事弁護委員会・編(2018)『量刑調査報告集Ⅴ』第一東京弁護士会)

もちろん、刑罰の重さは人身事故の態様や原因、被害者が亡くなっているのか、けがの重さはどの程度か、被害弁償はできているのかといった様々な事情に左右されますので、詳細な見通しなどは弁護士に相談してみることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、ひき逃げ事件に関連したご相談・ご依頼も承っています。
在宅捜査されている方向けの初回無料法律相談から、逮捕・勾留中の方向けの初回接見サービスまで、様々なご事情に合わせたサービスをご用意していますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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