(事例紹介)卑わいな行為を見せて強制わいせつ罪に問われた事例
~事例~
滋賀県警草津署は25日、強制わいせつの疑いで、滋賀県草津市の放課後児童支援員の男(35)を逮捕した。
容疑を否認しているという。
逮捕容疑は今年5月ごろ、自宅で市内の小学生女児に自慰行為を見せた疑い。
同署によると、男は学童保育の勤務の傍ら、自宅を子どもの遊戯スペースとして無償で開放していたという。
(※2022年7月25日18:44京都新聞配信記事より引用)
~触らなくても強制わいせつ罪になる?~
今回取り上げた事例では、男性が強制わいせつ罪の容疑で逮捕されていますが、容疑の内容は、小学生女児に自慰行為を見せたというものです。
強制わいせつ罪は痴漢などで成立することの多い犯罪であることもあり、「卑わいな行為を見せた」ということをもって強制わいせつ罪の容疑がかけられていることに疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、この報道の事案と照らし合わせながら強制わいせつ罪について確認していきましょう。
まず、強制わいせつ罪は刑法で以下のように定められています。
刑法第176条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
強制わいせつ罪では、被害者が13歳以上の方か13歳未満の方かによって、手段として暴行又は脅迫が用いられる必要があるかどうかが異なります。
被害者が13歳以上の方である場合には、暴行又は脅迫を用いて「わいせつな行為」をすることで強制わいせつ罪が成立します。
こうしたケースは、多くの方がイメージする強制わいせつ罪と合致しやすいのではないでしょうか。
対して、被害者が13歳未満の方であれば、暴行・脅迫なしであっても「わいせつな行為」をした時点で強制わいせつ罪が成立します。
こちらについては、なかなか世間一般のイメージにない部分かもしれません。
今回取り上げた事例にあてはめてみると、報道によると被害者は小学生女児です。
小学生は「13歳未満の者」ですから、たとえ暴行や脅迫がなくとも、「わいせつな行為」をしたのであれば強制わいせつ罪が成立するということになります。
では、「わいせつな行為」とはどういったことを指すのでしょうか。
強制わいせつ罪の「わいせつ」は、「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること」と解されています(名古屋高裁金沢支部判決昭和36.5.2)。
加えて、キスをしたという行為について強制わいせつ罪の成否が争われた事例で「すべて反風俗的のものとし刑法にいわゆる猥褻の観念を以て律すべきでないのは所論のとおりであるが、それが行われたときの当事者の意思感情、行動環境等によつて、それが一般の風俗道徳的感情に反するような場合には、猥褻な行為と認められることもあり得る」(東京高裁決定昭和32.1.22)とされた裁判例もあります。
こうした裁判例から、身体触るという行為でなくとも強制わいせつ罪の「わいせつな行為」となり得ることが分かります。
今回の報道の事例では、容疑の内容のうち自慰行為を見せつけるという行為が「わいせつな行為」に当たると考えられて、男性は強制わいせつ罪の容疑をかけられているということなのでしょう。
このように、刑事事件では一般に浸透しているイメージとは異なる内容であってもその犯罪が成立したり容疑をかけられたりというケースが存在します。
報道によれば男性は容疑を否認しているとのことですが、否認事件の場合には、どの部分を否認しているのかによっても、適切な対応は異なってきますし、成立し得る犯罪が変わる場合もあります。
だからこそ、何かしらの犯罪に問われ刑事事件となった場合に早期に弁護士に相談するメリットは大きいのです。
弁護士に相談することで、自分に容疑がかけられている犯罪はどういったものなのか、なぜその犯罪の容疑がかけられているのか、自分の認識・主張でその犯罪が成立するのかといったことをきちんと把握しながら刑事手続に臨むことが期待できるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、在宅捜査を受けている方から逮捕・勾留されている方まで幅広くご相談いただける体制を整えています。
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