琵琶湖上で監禁罪・強制わいせつ罪に?②

琵琶湖上で監禁罪・強制わいせつ罪に?②

~前回からの流れ~
Aさんは、滋賀県大津市にある琵琶湖畔で、友人女性のVさんらと遊んでいました。
AさんはVさんに好意を抱いており、Vさんに何度も水上バイクに一緒に乗るよう誘いをかけました。
Vさんは最初嫌がって断っていましたが、Aさんが何度もしつこく誘ったことからその誘いに折れ、「少しだけなら」とAさんと水上バイクに乗りました。
しかしAさんは、水上バイクを発進させると、Vさんが止めるのも聞かずに湖畔から離れた琵琶湖沖まで出て、そこでVさんに抱き着くと無理矢理キスをしました。
その後、Vさんが滋賀県大津北警察署に相談し被害届を出したことがきっかけとなり、Aさんは滋賀県大津北警察署監禁罪強制わいせつ罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和元年9月24日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・水上で監禁罪に?

前回はAさんの逮捕容疑の1つである強制わいせつ罪について触れましたが、今回の記事ではもう1つの逮捕容疑である監禁罪について触れていきます。

監禁罪は、刑法220条に規定されている犯罪です。

刑法220条
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

監禁罪は、人の身体・行動の自由を侵害する犯罪で、不法に=正当な行為以外で人を監禁した際に成立します。
正当な行為での逮捕・監禁の例では、刑事事件で逮捕状による逮捕や勾留状による勾留が行われることがよく挙げられます。
一般に監禁罪にいう監禁とは、人の身体を間接的・場所的に拘束してその自由を奪うこと=人を一定の限られた場所から脱出することを不可能又は著しく困難にすることを言います。
例えば、鍵のかかった部屋に誰かを許可なく閉じ込めるようなことをすれば、それは監禁罪にいう監禁行為であると考えられるでしょう。

今回のAさんのケースについて考えてみましょう。
監禁罪監禁行為という言葉からは、先ほど例に挙げたように、どこかの部屋に誰かを閉じ込めるような態様が想像しやすいでしょう。
しかし、今回のAさんはVさんを水上バイクに乗せて琵琶湖沖に出ているという行為をしているのみで、Vさんを部屋や何か狭いものに閉じ込めたというわけではありません。
これでも監禁罪は成立するのでしょうか。

実は、過去に似たような監禁事件の判例があります。
この事件は、被疑者は被害者を姦淫する目的で、自分の運転する原付自転車の荷台に被害者を乗せ、1,000メートル疾走したという内容でした。
この事件で、最高裁はこの行為を監禁罪に該当するとして監禁罪の成立を認めました(最決昭和38年4月18日)。
それはなぜかというと、先ほど触れた監禁罪の監禁という言葉の意味にあります。
繰り返しますが、監禁罪は人の身体や行動の自由を侵害する犯罪であり、監禁とは人を一定の限られた場所から脱出することを不可能又は著しく困難にすることを言います。
つまり、人の自由を奪う形であれば、何も部屋の中に閉じ込めたり、周囲が何かに囲まれている場所に被害者を置いたりしなくとも、監禁行為となりえるのです。

今回のケースでは、Aさんは水上バイクにVさんを乗せ、Vさんが止めるのも聞かずに琵琶湖沖まで出ています。
Vさんはその行為を止めていたということからも、Vさんの同意なく行われた行為であり、正当な行為であるとはいいがたいでしょう。
そして、水上バイクが走行している間はVさんはそこから脱出することはできませんし、琵琶湖沖に出てしまえば周りは湖ですから、そこでも脱出することは困難であるといえるでしょう。
ですから、AさんはVさんの身体・行動の自由を奪ったと考えられ、監禁罪の容疑がかかることになったのでしょう。

このように、たとえ周りがひらけているような場所であったとしても、状況次第では監禁罪が成立します。
監禁罪が成立しうる状況なのかどうかは、刑事事件に詳しい弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、0120-631-881でいつでも無料法律相談のご予約を受け付けております。
逮捕されている方向けの初回接見サービスも、同様にいつでもお申し込みいただけます。
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