同性でもストーカー規制法違反?
同性でもストーカー規制法違反になるのかということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、滋賀県高島市に住んでいる会社員の女性です。
Aさんは同性愛者であり、同性愛者のコミュニティで知り合った女性のVさんと交際していました。
しかしある日、ささいなことから2人はすれ違い、AさんはVさんに別れを切り出されてしまいました。
AさんはそれでもVさんに好意を持っていたため、VさんにSNSでメッセージを送り続けたり、滋賀県高島市にあるVさんの自宅に押しかけたりすることを続けました。
VさんはAさんに連続でメッセージを送ることや自宅に押し掛けることをやめるよう伝えましたが、Aさんは聞き耳を持たず、メッセージの連続送信や自宅への押しかけを継続して繰り返していました。
Aさんの行動に恐怖を感じるようになったVさんは、ついに滋賀県高島警察署に相談。
滋賀県高島警察署の捜査により、Aさんはストーカー規制法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんがストーカー規制法違反の容疑で逮捕されてしまったことを知ったAさんの家族は、弁護士に相談し、同性でもストーカー規制法違反になるのか、どういった弁護活動が可能なのかといったことを詳しく聞いてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・同性でもストーカー規制法違反になる?
ストーカーのような性犯罪では、男性が加害者、女性が被害者というイメージが強い方もいらっしゃるでしょう。
しかし、今回のAさんの事例のように、女性が加害者で被害者も女性という同性間でのストーカー規制法違反事件も起こりえます。
そもそも、ストーカー規制法で処罰される「ストーカー」とは、以下のように定義づけられています。
ストーカー規制法第2条第3項
この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(第1項第1号から第4号まで及び第5号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすることをいう。
ストーカーという単語からは、人の後をつけていくことが想像しやすいかもしれません。
そのためか、「人の後をついていけばストーカー規制法違反」と思っている方も多いでしょう。
しかし、ストーカー規制法では、単に人の後をついていくことが「ストーカー」とされているのではなく、以下に挙げられている「つきまとい等」が繰り返されることを「ストーカー」であるとしているのです。
特に今回のAさんのストーカー規制法違反事件に関連する「つきまとい等」について確認してみましょう。
ストーカー規制法第2条第1項
この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
第1号 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
(中略)
第5号 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。
(略)
今回のAさんは、Vさんへの好意からVさん宅のまで押し掛ける行為=「住居等に押し掛け」る行為(ストーカー規制法第2条第1項第1号)、SNSでメッセージを送り続ける行為=「拒まれたにもかかわらず、連続して…電子メールの送信等をする」行為(ストーカー規制法第2条第1項第5号)という、ストーカー規制法第2条第1項の「つきまとい等」に当てはまる行為をしています。
さらにAさんはこの「つきまとい等」にあたる行為を繰り返し継続して行っているようですから、「ストーカー行為」であると考えられます。
ストーカー行為については、ストーカー規制法で以下のように決められています。
ストーカー規制法第18条
ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
「ストーカー行為をした者は」という主語のとおり、ストーカー行為をする者の性別やストーカー行為を受けた相手の性別については言及されていません。
これは先ほど挙げた「つきまとい等」も同様です。
そのため、今回のAさんのような同性間でのストーカー規制法違反事件も起こり得るということになるのです。
・ストーカー規制法違反事件の刑事弁護活動
以前はストーカー行為によるストーカー規制法違反は親告罪でしたが、改正により非親告罪となりました。
そのため、被害者等の告訴がなくともストーカー行為があれば起訴が可能となったのです。
親告罪の場合には、起訴前に示談を締結するなどによって告訴を取り下げてもらったり告訴を出さないという約束をしてもらえれば不起訴を獲得することができましたが、非親告罪の場合は示談をしたからといって確実に不起訴となるわけではありません。
それでも、ストーカー規制法違反のような被害者の存在する犯罪では示談の有無は起訴・不起訴の判断や刑罰の重さを決める判断をするときに重要視される要素の1つです。
だからこそ、ストーカー規制法違反事件では、示談交渉に取り組んでいくことが考えられるでしょう。
しかし、特にストーカー規制法違反のような犯罪では、被害者の方が被疑者に対して恐怖感を抱いていることも珍しくありません。
そうした状況では、当事者が謝罪や示談を希望しても連絡すら拒否されてしまうということも十分考えられます。
だからこそ、第三者である弁護士を間に入れることで、謝罪や示談の場を設けてもらえる可能性を高めることが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
ストーカー規制法違反事件などの刑事事件にお困りの際は、お気軽にご相談ください。