業務上横領事件になりそうで不安

業務上横領事件になりそうで不安

業務上横領事件になりそうで不安であるというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、滋賀県彦根市にある会社Vの経理部長として働いている50歳の男性です。
Aさんは、会社Vのお金を管理する権限を持っており、時たま会社の金を着服しては帳簿を書き換え、会社の金を横領していました。
しかし、別の社員が会社の帳簿を確認したことから帳簿が合わないことが発覚し、社内で調査が行われることになりました。
Aさんは、このままでは自分の行為が露見し、業務上横領事件となってしまうのではないか、滋賀県彦根警察署に逮捕されてしまうのではないか、と不安に思うようになりました。
そこでAさんは、滋賀県刑事事件に対応している弁護士に相談してみたところ、警察の介入前でも弁護士に相談・依頼するメリットがあることが分かりました。
(※この事例はフィクションです。)

・業務上横領罪

今回のAさんの事例のように、経理などで会社のお金を管理する立場にある人がそのお金を勝手に自分のものにする行為は、典型的な業務上横領罪にあたる行為と言えます。
業務上横領罪は、業務上自己の占有する他人の物を横領することによって成立します。

刑法第253条(業務上横領罪)
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。

業務上横領罪の「業務」とは、人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う、委託を受けて他人の物を占有・保管することを内容とする事務であるとされています。
今回Aさんは会社Vの経理部長という地位に基づいて、会社から会社のお金を管理する権限を与えられて会社のお金を管理する事務=仕事に就いているので、業務上横領罪の言う「業務上」にあたる地位にいると考えられます。

そして、「横領」とは、委託されているものについて「不法領得の意思を実現するすべての行為」を指すとされています(最判昭和28.12.25)。
この横領行為での「不法領得の意思」とは、他人のものを支配・管理している者が、委託された任務に背いてその物について権限がないのにもかかわらず、その物を所有している人でなければできないような処分をする意思であるとされています。
今回のAさんの場合、当然会社から任されている仕事は、会社のお金を仕事の範囲で管理すると言う仕事になるでしょう。
当然その内容は、Aさんが会社のお金を自分のものにしていいという内容ではありませんし、Aさんにはその権限も与えられていません。
つまり、Aさんは自分に与えられた権限を超えて自分が管理している会社のお金を自分のものとするという行為をしているため、業務上横領罪の「横領」行為をしていると考えられるのです。

ここで注意しなければいけないのは、単に会社員が自分の会社などのお金を着服しただけでは業務上横領罪にはならないということです。
先ほどから見てきたように、業務上横領罪が成立するには、「業務上」に当てはまる立場と、「横領」にあたる委託の任務に反する行為がなければいけません。
例えば、会社のお金を管理する立場にない人が会社のお金を着服しても、前述のような「業務上」「横領」したとはいえないため、業務上横領罪には当てはまらないということになるのです(この場合、態様によって詐欺罪や窃盗罪など別の犯罪の成立が考えられます。)。

・業務上横領事件になる前に

業務上横領行為を自分の所属している会社に対して行った場合、その事実が会社に知られれば、今回のAさんが心配しているように、警察署に届けられて刑事事件化してしまうことも十分考えられます。
業務上横領罪の法定刑は10年以下の懲役と重いものになっていますから、被害額等によっては逮捕されてしまうこともあり得るでしょう。
だからこそ、業務上横領罪を犯してしまったら、早めに弁護士に相談し、できる活動をきちんと把握した上で今後の行動を決めることが望ましいでしょう。

今回のAさんのように、まだ警察などの捜査機関に事件が届けられていない場合には、刑事事件化する前に会社と示談交渉を行うのも有効な手段の1つです。
もしも会社が示談締結に応じてくれ、被害届を出す前に当事者間で解決することができれば、そもそも業務上横領事件として刑事事件化することを防ぐことができます。

たとえ刑事事件化したとしても、業務上横領行為の被害者である会社に被害弁償をしたり示談締結をしたりすることは、逮捕・勾留の回避や起訴・不起訴の判断、刑罰の重さの判断の際に有利に働くことが考えられますから、迅速に活動を始めておくことに越したことはないでしょう。
もちろん、刑事事件化して逮捕されてしまったり、取り調べが開始されたとしても、すでに弁護士に弁護活動を依頼しておけば、スムーズに釈放を求める活動へ移行してもらったり、取り調べへのアドバイスをもらったりすることもできますから、まだ業務上横領事件として刑事事件化していなかったとしても、まずは弁護士に相談・依頼してみることが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件前のご相談・ご依頼も受け付けています。
業務上横領事件に限らず、少しでも刑事事件についての不安がある場合には、お気軽にご相談ください。

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