ひき逃げで成立する犯罪
ひき逃げで成立する犯罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
滋賀県長浜市で会社員として働くAさん(21歳)は、自動車を運転して帰宅している最中、前方不注意によって横断歩道を横断中のVさん(67歳)をはねてしまいました。
人身事故を起こしてしまったことにパニックになったAさんは、そのまま現場から逃げ帰ってしまいました。
しかし、数日後、現場近くで交通事故の目撃情報を求める看板を見たAさんは、とんでもないことをしてしまったのだと後悔する気持ちが強くなり、滋賀県木之本警察署に自首したいと考えるようになりました。
両親にも交通事故と自首について打ち明けたAさんは、自首する前に弁護士の話を聞いておこうということになり、両親と一緒に刑事事件の初回無料法律相談を受け付けている法律事務所に問い合わせをしました。
(※この事例はフィクションです。)
・ひき逃げ
ひき逃げ事件では、実は2つの犯罪が成立します。
日本では、「ひき逃げ罪」といった形でひき逃げが犯罪になるわけではなく、人身事故を起こしたことによる犯罪と、ひき逃げをした(人身事故を起こしたにも関わらず逃げた)ということによる犯罪が成立するという形になるのです。
まず、人身事故を起こしてしまった場合、自動車運転処罰法(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)に規定されている、危険運転致死傷罪や過失運転致死傷罪に問われることになります。
今回のAさんのように、不注意によって人身事故を起こしてしまったような場合には、このうち過失運転致死傷罪が成立することが考えられます。
自動車運転処罰法第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
人身事故の被害者が怪我をしていれば過失運転致傷罪、死亡してしまっていれば過失運転致死罪となります。
今回のAさんについては人身事故の被害者にあたるVさんの状態が不明であるため、現在のところAさんにどちらが成立するのかは不明であるということになります。
この過失運転致死傷罪が、人身事故を起こしてしまった部分に成立する犯罪です。
ひき逃げ事件の場合、この自動車運転処罰法に定められているもの以外にもう1つ犯罪が成立することになります。
それが、道路交通法違反です。
道路交通法違反は飲酒運転や無免許運転などを処罰する法律であるというイメージのある方もいるかもしれませんが、道路交通法では、交通事故を起こしてしまった時の義務についても定めています。
道路交通法第72条第1項
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
このうち、前段に定められている義務は「救護義務」「危険防止措置義務」と呼ばれ、後段に定められている義務は「報告義務」と呼ばれています。
簡単に言えば、交通事故を起こしてしまったら、負傷者がいる場合は負傷者を救護し(救護義務)、道路における危険を防止する(例えば後続事故の防止など)措置を行い(危険防止措置義務)、警察へ通報(報告義務)をしなければならないということになります。
これらを行わないで交通事故現場から去ってしまうひき逃げ行為は、道路交通法に定める義務に反しているということになり、道路交通法違反となるのです。
交通事故を起こさないようにすることはもちろんのことではありますが、もしも交通事故を起こしてしまったら、道路交通法にあるような義務を果たさなければ、余計に犯罪を成立させることにつながってしまいます。
しかし、Aさんのようにパニックになってしまってその場から去ってしまいひき逃げ事件となってしまうケースも珍しくありません。
こうした場合に自首や出頭を考える方も少なくありませんが、では、自首や出頭をする際に注意しなければならないことはどういったことでしょうか。
次回の記事で詳しく取り上げます。
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