(事例紹介)情状酌量による減軽と殺人罪での執行猶予判決

(事例紹介)情状酌量による減軽と殺人罪での執行猶予判決

~事例~

(略)被告(86)は、ことし1月、自宅の寝室で、妻(略)(当時86)の首を絞めて殺害したとして殺人の罪に問われました。
11月1日の判決で大津地方裁判所の大森直子 裁判長は、(略)被告が病気で療養していた(略)を介護していたことを踏まえて、「犯行の動機は妻を闘病から解放して楽にしてあげようと考えたもので、前向きに生きようとしていた妻の意思を無視した自分勝手な判断だ。」と指摘しました。
そのうえで、「被告が妻に寄り添って日々の家事や介護の一端を担ってきたことは、身体的・精神的に大きな負担だったといえる。実刑を選択することも十分考えられる事案だが、後悔していると述べるなど反省の態度を示している。」などとして、執行猶予5年のついた懲役3年の有罪判決を言い渡しました。
(※2022年11月1日18:17NHK NEWS WEB配信記事より引用)

~情状酌量による減軽~

前回の記事で取り上げた通り、執行猶予を付けるためには、言い渡された刑罰の重さが3年以下の懲役又は禁錮である必要があります。
そして、殺人罪の刑罰の下限は5年の懲役であるため、単純に考えれば、殺人罪で有罪になるということは執行猶予がつかないということになるのですが、今回の事例のように、殺人事件であったとしても執行猶予判決が下されるというケースは存在します。
これは、いわゆる「情状酌量」が行われ、刑罰が減軽されたためであると考えられます。

刑法第66条
犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる。

今回取り上げた事例の判決文を確認すると、「…被告人が、…反省の態度を示していること、被告人の長男が出廷して被告人の更生支援を約束しているほか、長男や被告人夫婦を知る近隣住民が寛大な処分を求めており、更生環境が一定程度整っていること」といった事情が認められた上で、「…これらを総合考慮し、被告人に対しては、酌量減軽をした上で、主文掲記の刑を科して執行を猶予」するとされています。

ここで、情状酌量によって有期の懲役刑が刑罰が減軽される場合には、「有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。」(刑法第68条第3号)とされています。
殺人罪の場合、5年の懲役の2分の1を減軽するとすれば、2年6月の懲役まで減軽が可能=言い渡される刑罰が3年以下の懲役となる可能性が出てくるということになるため、情状酌量による減軽があった場合には、執行猶予が獲得できる可能性が出てくることとなります。
今回の事例でも、被告に言い渡された刑罰は懲役3年執行猶予5年とされていますから、情状酌量によって刑罰が減軽され、それによって執行猶予を付けることができたものと考えられます。

情状酌量による刑罰の減軽や、それによる執行猶予の獲得を目指すのであれば、捜査段階から事件の内容を詳細に把握したうえで、刑事裁判に向けての準備を行っていく必要があります。
刑事裁判はその裁判の直前だけ準備すればよいというわけではなく、捜査段階の取調べでの対応から慎重な対応をしていく必要があります。
まずは弁護士に相談し、適切な対応の仕方を把握してから臨むことがおすすめです。

また、殺人罪の場合、その刑事裁判は裁判員裁判となります。
裁判員裁判では、裁判官以外に一般の方が裁判員となって刑事裁判に参加し、有罪・無罪の判断や、有罪の場合の刑罰の重さを決めます。
ですから、こうした裁判に慣れていない裁判員の方にも、被告人側の主張が適切に伝わるように工夫しながら裁判を進めていくことが求められます。
そのためにも、早い段階から弁護士に相談・依頼しておくことが望ましいといえるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、裁判員対象事件のご相談・ご依頼を受け付けています。
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