(事例紹介)住居侵入盗撮事件などで保護観察付執行猶予判決となった事例

(事例紹介)住居侵入盗撮事件などで保護観察付執行猶予判決となった事例

~事例~

(前略)
被告は、背筋を伸ばして判決の宣告を聞いた。懲役2年6月、保護観察付き執行猶予4年。
(中略)
性犯罪者の再犯防止のためには適切な治療が必要という考え方が、司法関係者に広がっている。法務省保護局は2006年以降、「性犯罪者処遇プログラム」を実施。保護観察になった男性加害者を対象にした最新の調査では、プログラムを受講しなかった場合の再犯率は26%だったのに対し、受講した場合は15%にとどまっている。
(中略)被告が問われたのは住居侵入、ストーカー規制法違反、滋賀県迷惑行為等防止条例違反などの罪。同僚女性の勤務時間を把握し、自宅への侵入を繰り返したという。公判では起訴内容を認め、認知行動療法による再犯防止プログラムを受講していることを明かした。大津地裁は判決で「自宅に盗撮のための侵入を繰り返され、被害者が受けた精神的苦痛は容易に言葉にできるものではない」と非難。更生の意欲などを考慮して執行猶予とした上で、「被害者との接触を厳に禁止するなどしながら、専門家の指導監督下に置くのが相当」として保護観察付きとした。
(※2022年9月30日11:00京都新聞配信記事より引用)

~保護観察付執行猶予~

犯罪をして捜査を受けることとなった場合、捜査を経て検察官がその事件を起訴するか不起訴にするかの判断をすることになります。
起訴されるとなった場合には、刑事裁判となり、公開の法廷で有罪・無罪が争われたり、有罪の場合の刑の重さが決められたりします。
容疑に争いがない場合、多くのケースで刑罰を減軽してほしいという訴えや、執行猶予を付けてほしいという訴えをすることになるでしょう。
特に、刑務所に行ってしまういわゆる実刑判決を受けてしまえば、その期間中社会から隔離されて過ごすこととなってしまうため、実刑判決を避けてほしい=執行猶予を獲得してほしいと望まれる方は多いでしょう。

そもそも、執行猶予とは、文字通り刑罰の執行を猶予する制度です。
例えば、「懲役1年6月、執行猶予3年」という判決が下った場合、執行猶予期間である3年間は懲役1年6月という刑罰の執行が猶予され、3年間を何事もなく過ごすことができれば、懲役1年6月という刑罰は受けずに済むということになります。
執行猶予期間である3年間のうちに再度犯罪をして有罪となった場合には、猶予されていた懲役1年6月の刑罰を受けることになりますし、それに加えて執行猶予期間中にしてしまった犯罪の刑罰も受けることになります。

この執行猶予には、いくつか種類があります。
一般にイメージされる執行猶予は、「刑の全部執行猶予」を指すことが多いです。
これは、言い渡された刑罰のすべてが執行猶予の対象となるもので、先ほど例に挙げた「懲役1年6月、執行猶予3年」のケースはこの「刑の全部執行猶予」に当たります。

一方、「刑の一部執行猶予」という執行猶予も存在します。
この場合、執行が猶予される刑罰は全体の刑罰のうちの一部に限定され、例えば「懲役3年、うち1年につき3年の執行猶予」といった形になります。
例に挙げたケースでいうと、懲役3年のうち執行猶予されていない分の2年に関しては、刑が執行される=刑務所へ行くことになります。
そして、2年の刑期を終えて出所し、その後執行猶予の対象となった1年について3年間の執行猶予期間を過ごすということになります。
この3年間の執行猶予期間を何事もなく過ごせば1年分の懲役刑については受けることを免れられますし、逆に3年間の執行猶予期間で犯罪をしてしまえば、猶予されていた1年分の懲役刑としてしまった犯罪の分の刑罰を受けることとなります。

これらの執行猶予には、「保護観察」が付けられることがあります。
これが今回取り上げた事例の判決でも言い渡された「保護観察付執行猶予」です。
保護観察付執行猶予となった場合には、執行猶予期間中に保護観察官や保護司から指導監督を受けながら生活することになります。
例えば、「刑の全部執行猶予」の例で挙げた「懲役1年6月、執行猶予3年」のケースで保護観察付執行猶予であった場合、執行猶予期間である3年間は保護観察官や保護司から指導監督を受けながら生活することになります。
具体的には、最初に保護観察期間中に守るべき「遵守事項」(一般遵守事項と特別遵守事項があります。)が決められ、その「遵守事項」を守りながら生活するよう、定期的な面談・連絡を重ねながら指導・監督を受けることになります。
保護観察期間中の「遵守事項」のうち、「一般遵守事項」は保護観察付執行猶予判決を受けた人全員に共通して定められる事項であり、再犯をしないことや保護観察官・保護司の指導を誠実に受けることなどが定められています。
もう1つの「特別遵守事項」は、してしまった犯罪の傾向や個人の特徴によって定められるものであり、場合によっては「一般遵守事項」のみ定められ「特別遵守事項」は定められないこともあります。
例えば、共犯者のいる事件であれば共犯者との交際を断つということを定めたり、今回の事例で取り上げられている「性犯罪者処遇プログラム」などの再犯防止用プログラムの受講を定めたりすることが挙げられます。

単なる執行猶予ではなく保護観察付執行猶予が付されるケースとしては、今回の事例で裁判官が話していたような、実刑も考えられるが指導・監督や援助によって社会内での更生が期待できるというケースや、実刑までは考えられないが保護観察を付けることで社会福祉的な援助を期待するケースなどが考えられます。
例えば、再犯を何度も繰り返してしまい当事者だけでは更生が難しいもののプログラムの受講などの援助を受けることで更生が期待できるといったケースや、保護観察期間中に就労支援などを受けることで就労し生活環境を改善することが期待できるといったケースが想定されます。
今回取り上げた事例でも、認知行動療法などのプログラム受講などを遵守させることで、再犯防止に期待できると判断されたものと考えられます。

指導監督や援助を受けられるという意味では、保護観察付執行猶予は再犯防止や更生にプラスにはたらくと考えられますが、保護観察付執行猶予を受けた後に再犯をしてしまうと、再度の執行猶予を得ることはできません。
つまり、保護観察付執行猶予を受けた後に再度犯罪をしてしまえば、刑務所へ行くことになるということです。
ですから、「執行猶予になったから刑務所に行かなくて済んだ」と軽く考えるのではなく、保護観察付執行猶予を再犯防止・更生の機会として真摯に取り組む必要があります。
そういった環境を整えて刑事裁判に臨むためにも、早い段階から弁護士に相談し、準備していくことが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を多数取り扱う弁護士が、捜査段階から刑事裁判での公判弁護活動まで、一貫してサポートを行います。
執行猶予獲得を目指したい、刑事裁判になるのが不安だとお悩みの際は、一度お気軽にご相談ください。

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー