(事例紹介)大津地裁 強制性交等致傷罪などで実刑判決

(事例紹介)大津地裁 強制性交等致傷罪などで実刑判決

~事例~

去年5月、守山市の路上で20代の女性の体を触ったうえ、足を刺し大けがをさせたなどとして強制性交等致傷などの罪に問われた28歳の被告に対し、大津地方裁判所は「無差別的、通り魔的に犯行を繰り返した」として懲役10年の実刑判決を言い渡しました。
(中略)被告(28)は、去年5月、守山市の路上で20代の女性の体を触り、その際、包丁で女性の足を刺し、全治1か月の大けがをさせたとして強制性交等致傷の罪に問われました。
また、守山市での犯行の前に草津市の路上でも10代の女性に抱きついて体を触るなどしたとして、強制わいせつの罪などにも問われました。
(後略)
(※2022年7月27日18:09NHK NEWS WEB配信記事より引用)

~強制性交等致傷罪と刑罰の重さ~

今回取り上げた事例では、被告人の男性が、20代女性に対する強制性交等致傷罪と、10代女性に対する強制わいせつ罪の容疑で起訴され、刑事裁判の結果、懲役10年実刑判決が言い渡されたと報道されています。
強制性交等致傷罪も強制わいせつ罪も非常に重い犯罪であり、罰金刑の規定はなく懲役刑のみが定められています。
つまり、強制性交等致傷罪も強制わいせつ罪も、起訴されれば必ず刑事裁判となり、公開の法廷で有罪・無罪を争ったり、有罪の場合の刑罰の重さを判断したりすることになります。
さらに、有罪の場合には執行猶予がつかなければ刑務所に行くことになりますし、特に強制性交等致傷罪については刑罰の下限が懲役6年であることから基本的には執行猶予がつかないため(執行猶予がつくには言い渡された刑罰が懲役3年以下であることが必要)、強制性交等致傷罪で起訴され有罪となるということは、原則として実刑判決となり刑務所に行くということに繋がります。

刑法第176条(強制わいせつ罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

刑法第177条(強制性交等罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

刑法第181条第2項(強制性交等致死傷罪等)
第177条、第178条第2項若しくは第179条第2項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は6年以上の懲役に処する。

加えて、強制性交等致傷罪は、その刑罰の中に無期懲役も含まれています。
これによって、強制性交等致傷罪の刑事裁判は、裁判員裁判となります。
裁判員裁判では、裁判官に加えて一般の方から選出される裁判員に対しても被告人の主張を訴えていく必要があります。
法律知識や刑事事件の経験のない裁判員の方々に適切に主張を理解してもらうためには、より経験と工夫が求められるといえます。

~強制性交等致傷罪の成立~

ここで今回の事例を見ると、被告人の男性は、20代女性に対して、その身体を触り足を突き刺すなどしたとされています。
報道の内容だけでは具体的な犯行を全て知ることは叶いませんから、実際には被害女性が性交等にあたる被害を受けてしまったのかもしれませんが、報道だけ見ると「性交等にあたる行為をしていないように見えるのに強制性交等致傷罪が成立するのか」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、強制性交等致傷罪の条文では、「第177条…の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた」ということが強制性交等致傷罪の成立要件とされています。
つまり、「性交等」という強制性交等罪の結果が発生していない=強制性交等未遂罪を犯したにとどまる場合であっても、それによって人を負傷させてしまえば、強制性交等致傷罪の既遂となるということです。

ですから、例えば今回の事例で、被害女性が「性交等」の被害を受けていなかったとしても、強制性交等未遂罪を犯したと言える状態で、それによって被害女性が怪我を負っているのであれば、強制性交等致傷罪が成立するということになるのです。

今回の事例では、被告人は強制性交等致傷罪だけでなく、別件の強制わいせつ罪でも起訴されており、そういった部分での悪質性も加えて、懲役10年の実刑判決という判断になったのでしょう。
ここまで触れてきたとおり、強制性交等致傷罪や強制わいせつ罪は非常に重い犯罪であり、被害者に与える被害の大きさも大きい犯罪です。
被害者対応や刑事裁判に対する対応も慎重を期す必要がありますから、刑事事件化した段階から弁護士のサポートを受け、専門家のアドバイスを受けながら対応をしていくことが望ましいでしょう。

刑事事件を中心に取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、強制性交等致傷事件などの重大事件についてもご相談・ご依頼を承っています。
刑事事件を多数扱っているからこそ、裁判員裁判を担当した経験のある弁護士も所属しています。
裁判員裁判対象事件についても安心してご相談いただけますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー